こんにちは。
建築設備設計を行っているとよく話題になることが多いピット。
だが設計初心者の方がピットと聞いてもそもそもピットとは何ぞや?と思われる方が多いだろう。
ピットは建築設備にとってはまず欠かせない空間の一つだ。
今回は建物下部に設置するピットについて紹介する。
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ピットとは通常建物の下部に設置される。
そのため地盤面よりも下部にピットが設置されることがほとんどだ。
なおピットは人の居住の用途ではない。
主に建築設備の配管や、電気設備のケーブル類のために用意されることがほとんどだ。
ピットの使用例
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例えば地下階がない建物で1階に大便器が設置される場合を想定する。
大便器からは排水管が接続される。
壁掛け大便器であれば排水管中心高さはFL+100~FL+200程度だ。
床排水の大便器の場合は床下から排水管を接続する必要がある。
いずれの場合もよほどのことがない限り、1階の床下空間を利用し排水管のルートを確保する必要がある。
ピットがないとどうなるのか
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もしピットがないと左図の通りのイメージとなる。
つまり排水管は地中埋設となる。
地中埋設管の場合万が一排水管が破損した場合や、排水管の中で詰まったときに全く対応ができない。
点検をすることもできなければ修繕、更新を行うこともできない。
そのため基本的に建物下部に地中埋設管を行うことはNGとなる。
ピットとはどんな空間か
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ピット内は左の写真のように薄暗い空間だ。
ライトがないと光が全く入らない空間だ。
写真の場合だとピットの深さは2m以上ある。
またピット内に配管が計画されている。
ピット内は基本的に人が入ることを想定していない。
そのため照明はおろか換気設備も一切設けられていない。
長時間滞在する場合には十分な注意が必要な空間だ。
ピットの深さ
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次にピットの深さを紹介する。
基本的にピットを設ける場合は1,800mm以上とすることが多い。
理由は600φの人通口を設けるためだ。
梁せいの1/3の大きさとなる600φの人通口を設けるためには梁せいは1,800mm以上必要だ。
人通口とはピット内で人が行き来するために設けられる穴のことだ。
ピット内には至る所に地中梁がある。
その地中梁間を横断する唯一の手段が人通口だ。
試してみればわかるが450φの人通口だとよほど体格の細い人でないと通ることはできない。
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なおピットの深さを1,800mm未満で計画することもある。
だがその場合は地中梁に人通口を設けることが一切できない。
つまり各ピットへのアクセスとして大量にマンホール(床下点検口)が必要となる。
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人通口を設けない場合においてもピット内の有効深さは最低でも1,200mmは設けたいところだ。
また多くの配管が計画される箇所にはマンホールの数量を増やすことも考えられる。
ピットへアクセスするマンホール(床下点検口)
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マンホールの位置と数量を決定するための方法を紹介する。
前述した通りピットでは照明もなければ換気もない。
また実際に配管を施工するタイミングは上階の床が完成してからだ。
つまり極端に言えば巨大な建物にマンホール1個だけでは施工性も悪い上に、ピット内で迷子になるリスクがある。
それだけの危険が伴う空間だ。
そのため各マンホールから地中梁を3跨ぎ程度までとするようにマンホールの位置と数量を決定することが望ましい。
(会社の考え方によるため一概には言えない)
マンホールの位置
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マンホールの設置位置にも注意されたい。
タラップを設置する位置にマンホールがないとピット内に人が降りることができない。
またタラップは通常壁に打ち付けることがほとんどだ。
そのためどうしても地中梁寄りにマンホールを設置することとなる。
まとめ
今回は建物下部に設置するピットについて紹介した。
本稿を通じてピットの重要さや必要性について理解を深めていただければと思う。
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