温熱環境の評価 -PMVの評価方法 2025.04.19 こんにちは。 建築設備に従事していると、よく「室内が暑い」や「室内が寒い」などといった話を受けることがあるかと思う。しかし、この「暑い」や「寒い」は定量的な評価ではなく、個人の感覚的な評価である。人の感覚によって室内環境や屋外環境等を評価するにあたっては、一般的に室内温湿度より温熱環境を評価することがある。しかし、実際には風速や日射量、代謝量、着衣量等によって、人が感じる温熱感に影響を与える。そのため、これらを包括した評価が可能な平均予想温冷感申告(PMV)を用いることが多い。 今回は、PMVに関する評価方法について紹介する。 コンテンツ 平均予想温冷感申告(PMV)の概要平均予想温冷感申告(PMV)とはPMVの評価尺度予測不快者率(PPD)PMVの構成要素乾球温度相対湿度放射温度気流着衣量代謝量まとめ 平均予想温冷感申告(PMV)の概要 平均予想温冷感申告(PMV)とは PMVについて空気調和衛生用語辞典では「ある熱環境の快適度を直接温冷感の形で定量的に表す指標の一つ。多くの人に温冷感を投票させ、寒いを-3点、暑いを+3点とし、その中間を程度に従って、-2,-1,0,+1,+2に割り振って数値化して平均した値。快適な状態が基準になっているため、快適から大きく離れた条件に対しては適用できない。」と定義されている。 PMVの定義 ある熱環境の快適度を直接温冷感の形で定量的に表す指標の一つ。多くの人に温冷感を投票させ、寒いを-3点、暑いを+3点とし、その中間を程度に従って、-2,-1,0,+1,+2に割り振って数値化して平均した値。快適な状態が基準になっているため、快適から大きく離れた条件に対しては適用できない。 PMVの評価尺度 PMVの7段階評価尺度 +3 Hot 暑い +2 Warm 暖かい +1 Slightly Warm やや暖かい ±0 Neutral 中立 -1 Slightly Cool やや涼しい -2 Cool 涼しい -3 Cold 寒い PMVの評価尺度は左図に示すとおり、大きく7段階に大別される。数字が大きくなるほど暑く、数字が小さくなるほど寒い評価となる。。また、PMVが0に近づくほど快適であることを示す。 予測不快者率(PPD) また、PMVと連動するように予測不快者率(PPD)が設定されている。PPDは数値が0から離れるほど大きくなる。一般的にPMVが-0.5から0.5の中に納まれば、多くの人が快適に感じるとされている。 PMVの構成要素 PMVの構成要素 1. 乾球温度 2. 相対湿度 3. 放射温度 4. 気流 5. 着衣量 6. 代謝量 PMVは大きく左表の6種類の要素から構成される。温湿度の他に、日射等の影響による放射温度、気流や人の着衣量、代謝量でPMVが評価される。 乾球温度 乾球温度以外の条件を一定とした場合は、乾球温度が上昇するほどPMVも上昇する傾向にある。 相対湿度 相対湿度以外の条件を一定とした場合は、相対湿度が上昇するほどPMVも上昇する傾向にある。 放射温度 空気調和衛生工学用語辞典によれば放射温度とは「熱放射において、放射エネルギーまたはその波長分布がほぼ等しい放射をする黒体の温度」と記載されている。PMVの評価において、室内であれば、乾球温度と同じ温度を用いることも多い。しかし、日射の影響を受ける場合等においては、放射温度を別途設定する必要がある。 MRT(平均放射温度)計算式(案) MRT = ((T+273.15)^4 + ((F x α x E) ÷ σ))^0.25 – 273.15 T:外気温度[℃]F:人に対する日照率[-] α:人体への日射吸収率[-]E:日射量[W/m2]σ:ステファンボルツマン定数(5.67 x 10^(-8)※特に文献等で紹介されている数式ではなく、独自に設定した数式である。 そのため、取り扱いには注意が必要。 例えば、F=0.3、α=0.8のときにおける外気温度とMRTの関係は下図のとおりとなる。日射量が発生しない夜間においては、外気温度と放射温度は等しい結果となる。 放射温度以外の条件を一定とした場合は、放射温度が上昇するほどPMVも上昇する傾向にある。 気流 気流以外の条件を一定とした場合は、気流が上昇するほどPMVが低下する傾向にある。 なお、乾球温度が高い場合は、風速が大きくなっても、PMVへの影響はほとんどない。 着衣量 どの程度衣類を着るかによって、人の温熱感に影響を与える。下表に、着衣の種類と着衣量を示す。スーツを着ると1.0cloとなり、半袖半ズボンの場合は0.3cloとなる。 出典:https://www.ecoq21.jp/latest-article/no140/no140.pdf 着衣量以外の条件を一定とした場合は、着衣量が上昇するほどPMVが上昇する傾向にある。 代謝量 活動の種類 met 座る 1.0 立つ 2.0 歩く 3.0 やや速歩き 4.0 かなり速歩 5.0 ジョギング 6.0 筋力トレーニング 7.0 活動の強度ごとに代謝量が設定されている。活動の強度が大きくなるほど、代謝量も増加する。また、代謝量はメッツ(mets)で示され、1metsは代謝量が58.2W/m2となる。なお、建築設備設計基準では、人員負荷を121W/人見込む。そのときの代謝量は2.1metとなる。 代謝量以外の条件を一定とした場合は、代謝量が上昇するほどPMVが上昇する傾向にある。 まとめ 今回は、PMVに関する評価方法について紹介した。本記事を参考にPMVの傾向を把握いただければと思う。
コメント