こんにちは。
近年ではパッケージエアコンの効率も上昇し、建物にパッケージエアコンを導入するケースも増えている。
その中でも、小規模から中規模程度の建物に適したビル用マルチエアコンは設置スペースの導入事例が劇的に増えている。
ビル用マルチエアコンの採用により設備スペースを省力化することができる。
また、冷暖房を同時に行うことが可能なビル用マルチエアコンも普及している。
建築設備に携わる側としては、これらの便利な機器の特徴を把握したうえで、建物の計画を進める必要がある。
今回はビル用マルチエアコンの特徴および冷暖房切替形と冷暖フリーの違いについて紹介する。
概要
ビル用マルチエアコンとは、室外機1台に対して、室内機を複数設置することができる機器を示す。
特に、室外機の能力は最大で180kW程度(メーカーにより異なる)までラインナップされていることもあり、数十台の室内機を接続することが可能である。


個別運転の可否
近年では、パッケージエアコンについても室外機1台に対し、室内機を2台、3台設置することが可能である。
しかし、パッケージエアコンの場合は、室内機を個別に運転することができないことが大きな特徴である。
一方で、ビル用マルチエアコンの場合は、室内機それぞれにリモコンを設置可能であり、それぞれを個別に運転することができる。

設置スペース
パッケージエアコンの場合は、比較的冷暖房能力が小さいため、建物規模に比例して、パッケージエアコンを設置する必要がある。
大きな冷暖房能力を備えたビル用マルチエアコンの場合は、設置スペースを大幅に節約することが可能となる。


冷媒管長
パッケージエアコンとビル用マルチエアコンでは冷媒管長(簡単にいえば、室外機と室内機の配管の距離)の制約にも差がある。
一般的にパッケージエアコンの場合は冷媒管長が50m程度に対して、ビル用マルチエアコンは1km程度である。(メーカーや冷暖房能力により異なる)
そのため、室外機の設置場所に対する制約も大きく異なる。

冷暖房切替形と冷暖フリー
概要
ビル用マルチエアコンには冷暖房切替形と冷暖フリーの大きく2種類がある。
冷暖房切替形は室外機が冷房期間中は冷房のみしか運転ができず、暖房期間中は暖房しか運転ができない特徴がある。
一方で冷暖フリーは室外機が冷房と暖房を同時に行うことができる。
結果として、室内機毎に冷房と暖房を切り替えて運用することが可能となる。


必要な冷媒管
冷暖房切替形と冷暖フリーでは冷媒管の本数が異なる。
冷暖房切替形の場合は液管とガス管の2本だが、冷暖フリーの場合は液管とガス管の他に高圧ガス管の計3本必要になる。
(最近では、 2管で冷暖フリーを行うことが可能な機器もある。)
機器種別 | 液管 | ガス管 | 高圧ガス管 |
---|---|---|---|
冷暖房切替形 | ○ | ○ | ✕ |
冷暖フリー | ○ | ○ | ○ |
分流コントローラー

分流コントローラーは室外機と室内機の間に設置され、各室内機の冷暖房運転に合わせて、供給する冷媒(冷房・暖房)を変える役割を持つ。
室外機からは冷房と暖房が同時に供給される。
分流コントローラーによって、室内機ごとに冷暖房をスイッチするようなイメージである。

冷暖フリーのメリット
冷暖フリーのメリットとしては、室によって冷房運転と暖房運転を選択可能なことである。
特に春や秋(中間期)では、日射の影響等により冷房需要と暖房需要が混在しやすい。
そのため、空調のクレームと言う観点からすれば、冷暖フリーを選択することが望ましい。
機種別のメリット | |
---|---|
冷暖房切替形 | 安価 |
冷暖フリー | 冷房と暖房を同時に利用可能 |
冷暖フリーのデメリット
冷暖フリーの最大のデメリットはコストである。
冷暖フリー対応機種を選択する必要があることに加え、冷媒管が1本増える。
また、分流コントローラーも必要となり、費用が増大する。
機種別のデメリット | |
---|---|
冷暖房切替形 | 冷房と暖房を同時に行うことはできない |
冷暖フリー | 高価 |
まとめ
今回はビル用マルチエアコンの特徴および冷暖房切替形と冷暖フリーの違いについて紹介した。
冷暖房切替形と冷暖フリーの特徴を把握したうえで、空調計画を進めることが重要であろう。
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