ホーム > 機械設備一般 省エネ(標準入力法)の基準値 -事務所用途の熱源容量を紹介- 2025.03.08 こんにちは。度重なる省エネ法の改正により、より省エネに重点を置いた計画が求められている。その一方で、省エネ法の基準値が引き上げられたものの、一体どのように計画を行えば新たな省エネ基準を満足できるか、まだ手探り状態の方がほとんどであろう。一般的に建物からのCO2排出量のうち、おおよそ半分程度が空調設備から排出されている。そのため、建物の省エネ化を目指すうえでは、空調設備からのCO2排出量に十分配慮した計画が必要となる。空調設備の設計は基本的に室内から発生する熱負荷によって決められる。つまり、熱負荷を抑制するほど建物の省エネ化に直結する。今回は標準入力法(省エネ法算定ツール)による事務所用途の各室の熱源容量について紹介する。 コンテンツ 標準入力法における事務所の室用途一覧標準入力法における外気量空調機能力空調機送風量熱源容量空調機能力と熱源機容量の比較まとめ 標準入力法における事務所の室用途一覧 標準入力法における事務所の室用途一覧を以下に紹介する。なお、空調設備の基準値が設定されている室のみを対象とした。 室用途 照明発熱 人体発熱 人員密度 機器発熱 外気量 [W/m2] [W/m2] [人/m2] [W/m2] [m3/m2・h] 事務室 12.0 11.9 0.10 12.0 5.0 電子計算機器事務室 12.0 11.9 0.10 30.0 5.0 会議室 10.0 29.8 0.25 2.0 12.0 喫茶室 10.0 29.8 0.25 2.0 12.0 社員食堂 30.0 59.5 0.50 0.0 15.0 中央監視室 20.0 17.9 0.15 30.0 4.0 更衣室又は倉庫 15.0 35.7 0.30 0.0 4.0 廊下 15.0 3.6 0.03 0.0 2.5 ロビー 15.0 3.6 0.03 0.0 2.5 便所 15.0 3.6 0.03 0.0 2.5 喫煙室 15.0 3.6 0.03 0.0 2.5 標準入力法における外気量 標準入力法における外気量から人員密度を逆算した。具体的には建築設備設計基準に基づき一人あたりの外気量を30m3/hとした際における人員密度を算定した。下表に示すとおり、外気量より算定した人員密度と、標準入力法で基準とされている人員密度では差異が見られることが確認できる。例えば、事務室用途であれば一般的に0.15人/m2程度を基に外気量を算定する事が多い。そのため、省エネ基準値よりも外気導入量を少なくすることが可能である。一方で、会議室においては一般的に0.50人/m2程度を基に外気量を算定する事が多い。つまり、省エネ基準値よりも外気量が多くなる。すなわち、外気量のみに着目すると、会議室用途の室が増えるほど、省エネ基準を満足しづらくなる。 室用途 外気量 単位外気量 人員密度 [m3/m2・h] [m3/h・人] [人/m2] 事務室 5.0 30.0 0.17 電子計算機器事務室 5.0 30.0 0.17 会議室 12.0 30.0 0.40 喫茶室 12.0 30.0 0.40 社員食堂 15.0 30.0 0.50 中央監視室 4.0 30.0 0.13 更衣室又は倉庫 4.0 30.0 0.13 廊下 2.5 30.0 0.08 ロビー 2.5 30.0 0.08 便所 2.5 30.0 0.08 喫煙室 2.5 30.0 0.08 人員密度[人/m2] = 外気量[m3/m2・h] ÷ 単位外気量[m3/h・人] 空調機能力 省エネ基準値の事務所用途の室用途別空調機能力と空調機送風量を下図に示す。なお、事務所用途の場合は全熱交換器(熱交換効率60%)により、外気負荷を低減していることに留意が必要である。 空調機送風量 空調機送風量から換気回数を下表にて算定した。一般的な事務室の天井高さ(2.7mH)とした場合における換気回数を確認すると、事務室用途で8回換気であった。 室用途空調機送風量天井高換気回数[m3/m2・h][mH][回/h]事務室21.62.78.00電子計算機器事務室24.82.79.20会議室32.02.711.87喫茶室32.02.711.87社員食堂40.72.715.07中央監視室24.52.79.07更衣室又は倉庫18.22.76.73廊下15.52.75.73ロビー15.52.75.73便所15.52.75.73喫煙室15.52.75.73 熱源容量 次に標準入力法における熱源容量の基準値について紹介する。事務室や会議室等においては加熱能力のほうが大きいことが確認できる。 空調機能力と熱源機容量の比較 水搬送に伴う熱ロス等を見込む必要がある熱源機容量は、一般的に空調機能力よりも大きくなる傾向がある。下表で空調機能力と熱源機容量を比較した。空調機比に着目すると、室用途によって比率に大きく差があるが、すべての室で熱源機能力が空調機能力を上回る結果となった。 室用途 熱源機能力 空調機能力 空調機比 冷却時 加熱時 冷却時 加熱時 [kW/m2] [kW/m2] [kW/m2] [-] [-] 事務室 0.15 0.16 0.12 1.22 1.32 電子計算機器事務室 0.17 0.16 0.14 1.20 1.14 会議室 0.22 0.22 0.18 1.21 1.26 喫茶室 0.22 0.22 0.18 1.21 1.26 社員食堂 0.27 0.25 0.23 1.21 1.11 中央監視室 0.16 0.15 0.14 1.21 1.10 更衣室又は倉庫 0.12 0.15 0.10 1.21 1.49 廊下 0.10 0.14 0.09 1.21 1.58 ロビー 0.10 0.14 0.09 1.21 1.58 便所 0.10 0.14 0.09 1.21 1.58 喫煙室 0.10 0.14 0.09 1.21 1.58 まとめ 今回は標準入力法(省エネ法算定ツール)による事務所用途の各室の熱源容量について紹介した。本稿で紹介した熱源容量と現状計画している建物の熱源容量を比較することで、計画している建物がどの程度省エネとなっているかの参考としていただければと思う。
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