こんにちは。
建物の外壁面にルーバーを設置し、外皮負荷を積極的に低減する計画が増えている。
しかし、ただ闇雲にルーバーを設置しても、日射遮蔽による効果を最大限活かしきれない。
実際には、日射角に対して正対するように設置することが望ましいと思われる方もいるかもしれないが、実際には、ルーバーの形状(縦横比)によっても異なる。
今回は、ルーバーの角度と日照面積率について紹介する。

一般的に日照面積率は左図の通り、ルーバーの幅と長さにより、計算される。
ルーバーの幅や奥行きが大きいほど、日照面積率を低減できる。
ただし、ルーバーの奥行方向の寸法を積極的に増やしても、ルーバーの幅の寸法を同じだけ増やすよりも効果が小さい特徴がある。
ルーバーを傾けた場合の日照面積率
ケーススタディ
ルーバーの角度について以下の5種類のパターンでケーススタディを行った。
なお、与条件として、ルーバーの幅は200mm、奥行きは500mmとした。
また、日射角度は窓面に対して30°とした。
結果、最も日照面積が小さくなるのは、ルーバーが日射に対して正対しているときではなく、ルーバーの角度が30°から45°の間であることが確認された。





ルーバーの角度と遮蔽長さの関係
ここからは少し学術的な内容となる。
ルーバーの角度と遮蔽長さの関係は下図のように示すことができる。
すなわちyの長さが最も大きくなるときのルーバーの角度のとき、ルーバーによる遮蔽長さが最大となる。
遮蔽長さのyを分解すると、y1とy2に分けることができる。
ルーバーの角度θを用いると、sinθ=(y2/d)、cosθ=(y1/x)とすることができる。
また、これらより、y1=cosθ・x、y2=sinθ・dとなる。
すなわち、y=sinθ・d + cosθ・xと示すことができる。

計算式 | |
---|---|
sinθを求める式 | sinθ = y2 ÷ d |
cosθを求める式 | cosθ = y1 ÷ x |
y1とy2で始まる式に書き換える | y1 = cosθ・x |
y2 = sinθ・d | |
yを求める | y = y1 + y2 |
y = cosθ・x + sinθ・d |
例えば、ルーバーの角度が30°の場合で、ルーバーの幅が200mm、奥行きが500mmの場合は以下とおりとなる。

計算式 | |
---|---|
sinθを求める式 | sinθ = 1/2 |
cosθを求める式 | cosθ = √3/2 |
y1を求める式 | y1 = cosθ・x = √3/2・200 = 173 |
y2を求める式 | y2 = sinθ・d = 1/2・500 = 250 |
yを求める式 | y = y1 + y2 = 423 |
ルーバーの幅が200mm、奥行きが500mmとなる場合における、角度θと遮蔽長さの関係は以下のグラフで示される。
下図より、概ね68.43°のときに遮蔽長さが538mmと最大となる。

日射角とルーバーの角度の関係
前項では、あくまでも水平に入射する場合に対してのルーバーの角度を計算した。
次に窓面で実際に遮蔽可能な長さを算定する。
窓面への日射角度をγとすると、日射角γに対するルーバーによる遮蔽長さは
cosγ=y/L1で表すことができる。
もしくは、建築設備設計基準では入射角γについてtanγで示されているため、
1+tan2γ=(1/cos2θ)の公式を用いて計算することも可能である。


計算式 | |
---|---|
計算方法その1 | cosγ = y/L1 |
L1 = y/cosγ | |
計算方法その2 | 1+tanγ = 1/cos2γ |
cos2γ = 1 / (1 + tan2γ) | |
cosγ = √(1 / (1 + tan2γ)) | |
L1 = y/cosγ = y /(√(1 / (1 + tan2γ))) |
例えばγ=30°で、y=538mmの場合における遮蔽長さL1を求めるためには、以下の式で求められる。

計算式 | |
---|---|
計算方法その1 | cosγ = cos30° = √3/2 |
L1 = 538/(√3/2) = 621[mm] | |
計算方法その2 | 1+tan2γ = 1/cos2γ |
cos2γ = 1 / (1 + tan2γ) = 1 / (1 + (1/√3)^2) = 0.75 | |
cosγ = √(1 / (1 + tan2γ)) = 0.866025403784439 | |
L1 = y/cosγ = y /(√(1 / (1 + tan2γ))) = 538/0.866025403784439 = 621[mm] |

すなわち、日射角が30°かつ、ルーバーの幅、奥行きがそれぞれ200mm、500mmの場合において、最も遮蔽長さが長くなるときのルーバー角度は左図のとおりとなる。
まとめ
今回は、ルーバーの角度と日照面積率について紹介した。
せっかくルーバーを導入するのであれば、ルーバーを最大限活用することが大切である。
そのためにも、日射角に応じたルーバーの角度を検討したうえで、方針を決定することが望ましい。
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