外壁負荷を算定するために用いる実効温度差について紹介

こんにちは。

建物の省エネ化を図る際には、設備単体の高効率化や効率的な設備システムの構築が挙げられる。
しかし、設備だけの努力では徹底した省エネ化の実現は難しいことが事実である。
そのため、設備的な努力の他にも建築的な配慮によって、省エネ化をより推し進めることが重要となる。
熱負荷の大部分を占める要素としては外皮負荷が挙げられる。
外皮負荷を低減することで熱負荷を大きく低減することが可能となり、結果として、エネルギー消費量を低減することが可能となる。

外皮負荷は大きく外壁負荷とガラス面負荷に大別される。
その中でも外壁負荷は構造体の蓄熱負荷の影響も考慮し計算するため、熱負荷への影響が大きい。
これを実効温度差というが、構造体が日射の影響を受けるほど温度差が大きくなる。

今回は外壁負荷を計算する際の実効温度差について紹介する。

外壁負荷とは

外壁負荷とは、主に外部空間から壁を通じて、発生する熱負荷を示す。
外壁負荷は主に外部との温度差による熱負荷と、日射やその他内部発熱等の影響を受けることによる蓄熱負荷の2種類の合計値により算定される。

外壁負荷外部と室内の温度差による熱負荷
蓄熱負荷

空気調和衛生工学用語辞典による実効温度差の定義

空気調和衛生工学用語辞典では実効温度差は「外壁において、室内外の気温差および外表面が受ける日射の影響と壁体での熱的遅れを考慮した韓流熱量を熱通過率で割ったもの。外表面からの夜間放射も考慮する場合もある。」と定義されている。

外壁負荷の算定方法

外壁負荷の算定方法は、冷房負荷と暖房負荷で異なる。
冷房負荷算定時においては、実効温度差を乗じることで算定する。(後術)
一方で暖房負荷算定時においては、室内外温度差を乗じることで算定する。
暖房負荷計算時は日射による蓄熱負荷が利得となるため、蓄熱負荷を計上せずに、室内外の温度差により外壁負荷を算定する。

外壁負荷の計算式
冷房負荷構造体の面積[m2] x 構造体熱貫流率[W/(m2・K)] x 実効温度差[℃]
暖房負荷構造体の面積[m2] x 構造体熱貫流率[W/(m2・K)] x 室内外温度差[℃] x 方位係数
方位方位係数
陸屋根、最下階の床、ピロティ1.20
北、北東、北西、東、西向外壁1.10
南東、南西向外壁1.05
南向外壁1.00

実効温度差

実効温度差一覧

建築設備設計基準(令和6年度)より、室内温度を26℃としたときの地域別実効温度差を以下に紹介する。
また、室内温度が異なる場合は実効温度差を補正して計算する。
例えば室内温度が28℃の場合は、下表の実効温度差から2℃減じた数値で計算する。

壁タイプについて、一般的な建物ではⅢ(内断熱)もしくはⅤ(外断熱)となることが多い。
但し、折板屋根の場合は壁タイプがⅡとなることもある。
(壁タイプの説明は本稿では省略する。)

実効温度差の読み方の例
条件9時12時14時16時
札幌26℃方位N壁タイプⅢ0℃2℃4℃5℃
仙台26℃方位E壁タイプⅤ7℃11℃11℃10℃

実効温度差分析

壁タイプ別実効温度差

地域別壁タイプ別に方位別の実効温度差を以下に紹介する。
壁タイプⅢは内断熱、壁タイプⅤは外断熱を示す。
全体的に、外断熱のほうが、実効温度差が小さいことがわかる。
しかし、外断熱が一概に良いわけではなく、外断熱であるがゆえに、室内を冷却、加熱するために要する時間がかかるといったデメリットがある。

時刻別方位別地域別実効温度差

次に、時刻別方位別地域別の実効温度差を紹介する。
主に午前中の時間帯においては、東側の実効温度差が大きくなる傾向にある。
また、16時になると、東西ともに実効温度差がある程度平準化する傾向となる。

まとめ

今回は外壁負荷を計算する際の実効温度差について紹介した。
実効温度差の特徴を理解することで、外壁負荷を低減することの重要性をより理解できるようになるはずである。

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