全熱交換器を用いた際の必要加湿量について紹介 2024.10.27 こんにちは。建物内に全熱交換器を導入すると、外気が室内へ流入する際の温湿度が可変する。その際に、どのように加湿量を計算したらよいかがわからない方も多いだろう。一般的に全熱交換器により、室内へ流入する外気の温湿度は室内温湿度に近づく傾向にある。そのため、必要加湿量も低減する傾向となる。今回は全熱交換器を用いた際に必要な加湿量について紹介する。 コンテンツ 全熱交換器とは必要な加湿量空気線図での絶対湿度差と必要加湿量全熱交換器を用いた際の必要加湿量の計算方法例題①例題②加湿計算上の注意点まとめ 全熱交換器とは 全熱交換器とは、室内の空気の熱を外気の空気の熱と熱交換し、少しでも外気を室内温湿度に近づけてから室内に空気を導入する装置をいう。その特性上、全熱交換器には、外気や排気のほかにも、還気や給気も必要となる。 空気の変動のイメージとしては下図のとおりである。夏期の場合は、全熱交換器を用いることで、例えば外気が35℃から30℃程度まで温度が下がる。(室内温度に近づく)つまり、冬期の場合においても同様であり、全熱交換器により、例えば0℃の空気が10℃程度まで昇温する。 空気線図で示すと下図のとおりとなる。熱交換器により外気が室内温度に近づいて、室内へ供給される。 必要な加湿量 室内に必要な加湿量は以下の式で計算される。必要加湿量は外気と室内空気の絶対湿度差により計算される。 必要加湿量計算式 必要加湿量[kg/h] = 空気密度[kg/m3] x 風量[m3/h] x 絶対湿度差[kg/kg] 必要加湿量[kg/h] = 1.2 x 風量[m3/h] x 絶対湿度差[kg/kg] 空気線図での絶対湿度差と必要加湿量 空気線図で確認すると、絶対湿度差と必要加湿量は下図のとおりとなる。外気と室内空気の縦軸の差分が小さくなるほど、必要加湿量は小さくなる。すなわち、前項で紹介した通り全熱交換器を使用すると、縦軸の絶対湿度の差分が小さくなる傾向となる。そのため、結果として、必要加湿量が小さくなる。 全熱交換器を用いた際の必要加湿量の計算方法 例題① 境界条件外気条件0℃,50%,0.0019kg/kg室内条件22℃,40%,0.0066kg/kg外気量500m3/h熱交換効率60% 例題①として、計算条件を左表に示す。外気は0℃50%で、室内は22℃40%とする。また、外気量は500m3/hとし、熱交換効率は60%とする。 熱交換器通過後の外気 乾球温度 (22℃ – 0℃) x 60% + 0℃ = 13.2℃ 絶対温度 (0.0066kg/kg – 0.0019kg/kg) x 60% + 0.0019kg/kg = 0.0047kg/kg 相対湿度 乾球温度と絶対湿度より、空気線図上で空気の状態を確認すると相対湿度は50%となる。 必要加湿量計算必要加湿量[kg/h] = 空気密度[kg/m3] x 風量[m3/h] x 絶対湿度差[kg/kg]必要加湿量[kg/h] = 1.2 x 500[m3/h] x (0.0066 – 0.0047)[kg/kg]=1.2 x 500 x 0.0019 = 1.14kg/h 例題② 境界条件外気条件-5℃,70%,0.0018kg/kg室内条件19℃,40%,0.0054kg/kg外気量1,000m3/h熱交換効率50% 例題①として、計算条件を左表に示す。外気は-5℃70%で、室内は19℃40%とする。また、外気量は1,000m3/hとし、熱交換効率は50%とする。 熱交換器通過後の外気乾球温度(-5℃ – 19℃) x 50% + (-5)℃ = 7.0℃絶対温度(0.0054kg/kg – 0.0018kg/kg) x 50% + 0.0018kg/kg = 0.0036kg/kg相対湿度乾球温度と絶対湿度より、空気線図上で空気の状態を確認すると相対湿度は58%となる。 必要加湿量計算必要加湿量[kg/h] = 空気密度[kg/m3] x 風量[m3/h] x 絶対湿度差[kg/kg]必要加湿量[kg/h] = 1.2 x 1,000[m3/h] x (0.0054 – 0.0036)[kg/kg]=1.2 x 1,000 x 0.0018 = 2.16kg/h 加湿計算上の注意点 加湿計算を行う上で、ビル管法への適用が求められる場合は、加湿計算に用いる値に注意をする必要がある。例えば東京では、外気は0℃50%とし、室内空気を22℃50%として計算を行う必要がある。また、さらに安全率として1.2倍を乗じる必要がある。これらの計算条件は、各自治体によって異なるため、都度確認することを推奨する。 まとめ 今回は全熱交換器を用いた際に必要な加湿量について紹介した。全熱交換器を用いることで、必要な加湿量を低減することができる。全熱交換器自体の仕組みを理解していれば、必要な加湿量の計算方法自体はそこまで難しくないため、これを機に是非習得されたい。
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