【改修時に必須の知識】風量が変わると必要静圧(圧損)はどの程度変化する?

こんにちは。

建物の改修や空調機の改修を行う際、空調機の風量だけを変更し、ダクトを再利用する場合がほとんどである。
風量を変更させるということは、必要な静圧も変わる。
そのため、本来であれば、静圧計算を再度行う必要があるわけだが、既設のダクトが具体的にどのように施工されているかが、わからないことが多い。
既設のダクト図があれば、静圧計算に必要な情報を拾うことが可能かも知れない。
しかし、20年から30年はcadではなかったことも多いため、読み取ることができない図面であることもしばしばある。

そういった状況下でも実は必要静圧を算出する方法はある。
具体的には必要静圧は動圧に比例する。

今回は風量や動圧と必要静圧の関係性について紹介する。

境界条件

本稿では、風量や動圧、必要静圧について、ある一定の傾向がわかれば十分であるため、以下の条件で計算を行う。

今回試算を行う条件
風量600m3/h~1,500m3/h(100m3/h刻み)
ダクト径200Φ,250Φ,300Φ,350Φ,300×300,350×350

風量と静圧の関係

風量と静圧の相関図を以下に示す。
静圧は風量の2乗に比例することがわかる。
またこの傾向は、丸ダクトと角ダクトで特に変わらないことがわかる。
(風量が0のとき、必要静圧が厳密には0にはならないが、下表の近似式より誤差の範囲だろう。)

動圧と静圧の関係

次に、動圧と静圧の相関図を以下に示す。
風量と静圧のときの関係とは異なり、動圧と静圧は比例する関係にあることがわかる。
(風量が0のとき、必要静圧が厳密には0にはならないが、下表の近似式より誤差の範囲だろう。)

風量から動圧の算出方法

風量から動圧の算出方法を以下に紹介する。
動圧は風速の2乗を用いて算出するため、結果として、静圧は風量の2乗といった相関となる。

動圧の算定式
動圧[Pa] = 空気密度[kg/m3] x 風速[m/s]^2 ÷ 2
※但し、空気密度は1.2とする。

局部抵抗の傾向

局部抵抗係数は以下の式で示される。
つまり、直管部の抵抗と同様に静圧は風量の2乗に比例し、動圧に比例する関係となる。

局部抵抗の算定式
局部抵抗[Pa] = 局部抵抗係数 x 動圧[Pa]

※局部抵抗係数は部材によって異なる。

計算例

以下に計算例としての既設機器とダクト径等の仕様を示す。
風量が5,000CMHで機外静圧が500Pa、ダクト径が600×400の場合における計算を行う。

既設機器の計算条件
既設空調機仕様空調機風量5,000CMH
空調機機外静圧500Pa
既設ダクト仕様ダクト径600 x 400
既設仕様の計算値丸ダクト相当サイズ533Φ
面風速6.3m/s
動圧23.8Pa/m

上記の既設機器の計算条件を基に、下表に示す空調機風量4,000CMHへ変更した場合の空調機機外静圧を算定する。
空調機更新前後により、静圧の見直し係数は0.63となり、空調機の機外静圧は315Paとなる。

更新機器の計算
更新空調機の風量空調機風量4,000CMH
計算見直し丸ダクト相当サイズ533Φ
面風速5.0m/s
動圧15.0Pa/m
計算結果静圧見直し係数15.0Pa/m ÷ 23.8Pa/m = 0.63
空調機機外静圧500Pa x 0.63 = 315Pa

まとめ

今回は風量や動圧と必要静圧の関係性について紹介した。
必要静圧は風量の2乗に比例し、動圧に比例する。
これらの関係性がわかれば、空調機を改修し、風量を変更する場合においても、必要静圧を求める事ができるはずである。

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