空調機のCO2制御とは -概要と制御イメージを紹介- 2024.03.03 こんにちは。省エネの観点から最近の空調機には二酸化炭素濃度制御(以降CO2制御という)が組み込まれていることが多い。CO2制御は比較的省エネ効果が大きい項目の一つだ。しかし、設計初心者の方からすれば、なぜCO2制御が省エネにつながるのかがよくわからない方も多いだろう。今回はCO2制御の概要とCO2制御による省エネについて紹介する。 コンテンツ CO2制御の概要外気を導入する理由外気量を制御する理由CO2濃度で外気量を制御する理由人員数による制御CO2濃度の制御イメージCO2センサと外気量制御MDとVAVの違いCO2制御による省エネ効果まとめ CO2制御の概要 CO2制御は一般に二酸化炭素濃度制御とも呼ばれ、CO2制御とは室内の二酸化炭素濃度により外気量の制御を行うことを示す。一般的に外気負荷が大きいほど建物全体の空調負荷が大きくなる。つまり、外気量を絞る制御を行うほど省エネにつながることとなる。 外気を導入する理由 通常、様々な建材が使用されることで建物が建てられる。これらの建材からは有害物質が発生し、適切な換気を行わないとシックハウス症候群になる恐れがある。このシックハウス症候群を未然に防ぐため、建築基準法により必要な換気量が決められている。建築基準法では、シックハウスによる換気量の他、人員による換気量等が定められている。通常、シックハウスによる換気量よりも人員による換気量の方が多い。そのため人員により計算される換気量を満足するように換気設備が計画される。 建築基準法による換気項目内容シックハウス住宅:0.5回/h 非住宅:0.3回/h 以上人員数による換気20Af/n (Af:居室の床面積、n:人員の専有面積) 以上 こちらで室用途と必要換気量の詳細について紹介しているため、興味がある方はご確認頂きたい。 室用途と換気量 -必要換気量の計算方法を紹介-こんにちは。 最近何かとよく話題に上がることが多い換気量。設計時においては適切に計画をしないと建築確認申請時に指摘が入る項目の一つだ。必要換気量は室用途により異なり、人員数による換気量の他、臭気等の発生室はその用途に見合った換気量で計画する... 外気量を制御する理由 換気量は人がある程度定常的にいることを前提としていることから、人がほとんどいない時間においては、換気量が過剰に見込まれていることとなる。換気量を過剰に見込むということはエネルギーをその分余計に使用していることとなる。そのため、人員数が少ない時間帯において、外気を絞りエネルギーの低減を図ることを可能とするためCO2制御が行われることが多い。中規模、大規模建物においては中央熱源方式による空調となっていることが多い。そのため、空調機に外気を導入した上で室内へ空調空気を供給する。その際に外気量を絞るほど、不要な外気を冷却、加熱する必要がなくなり、結果として省エネにつながる。 CO2濃度で外気量を制御する理由 建築物衛生法(ビル管法)により室内のCO2濃度を1,000ppmとする必要がある。つまり、CO2濃度を基準値以下とするため、CO2濃度を測定し、CO2濃度がより低い外気量をコントロールする必要がある。 建築物衛生法(ビル管法)による換気 項目 内容 CO2濃度 1,000ppm以下 人員数による制御 出典:OMRON_https://components.omron.com/sites/default/files/datasheet_pdf/CEOH-012.pdf CO2濃度による制御は一般的にフィードバック制御に分類される。人員の呼気から発生するCO2が時間遅れで、CO2濃度として計測され、遅れる形で外気量の制御が行われるためだ。一方で最近では技術の革新に伴い、画像センサー等を用いて、計測された人員数により外気量を制御する方式も試験的に導入されている。センサーによりリアルタイムで人員数を測定可能なため、CO2制御とはことなり、即座に外気量が制御される。これをフィードフォワード制御という。最近ではAI空調の知名度も上がってきたことにより、よりこれらのセンシング技術が普及するものと思われる。 CO2濃度の制御イメージ CO2センサと外気量制御 CO2制御を行うためにはCO2濃度計を設置する必要がある。CO2濃度計は通常、室内壁面もしくは還気ダクト内に設置されることが多い。そのCO2濃度計からの情報を受けて、外気ダクトに設置されるMDもしくはVAVが制御される。MDもしくはVAVの開度はCO2濃度により比例制御される。 MDとVAVの違い MDは開度を制御する一方で、VAVは風速を監視し必要な風量通りであるかを制御する。そのため、MDの場合は実際にどれだけの風量が導入されているかがわからないことが特徴だ。MDの方が安価ではあるが、より厳密な制御を行う場合はVAVを見込むといったすみわけとなる。 CO2制御による省エネ効果 例えば室内負荷が10kW、外気負荷が10kW、合計の室負荷が20kWである場合を考えてみる。この外気負荷がCO2制御により3割となれば、外気負荷が10kWx0.3=3kWとなり、室負荷が合計13kWとなる。つまり、室負荷が当初の13kW ÷ 20kW = 65%となり、35%省エネが行われたこととなる。外気導入量はCO2濃度によるため、常時外気量が絞られるわけではないが、比較的大きな省エネ効果が得られることが理解できるだろう。 CO2制御による省エネ効果(例)項目内容境界条件室内負荷10kW外気負荷10kW外気量制御無全負荷10kW+10kW = 20kW外気量制御有全負荷10kW+10kWx0.3 = 13kW まとめ 今回はCO2制御の概要とCO2制御による省エネについて紹介した。省エネ法やZEB(カーボンニュートラル)の影響もあり、最近では建物の省エネ化を図ることが必要不可欠である。そのため、設備設計者として省エネに関する知識を身につけることがまずます重要となるだろう。
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