こんにちは。
ある程度の規模にとなると、ビル管法(建築物衛生法)の対象となる。
ビル管法の対象となった建物は、建築確認申請時に、建物の衛生環境に関する審査も受審する必要がある。
その際によく、指摘事項として挙がる内容が加湿量の計算方法だろう。
自治体によって、独自の数値を用いた計算方法であることが多い。
そのため、多くの場合は、建築確認申請前にあらかじめ、一度指導事項を一式確認しておく必要がある。
加湿計算に関する協議の際に双方の共通理解を得るためには、加湿量の計算方法に関して基礎的な内容を理解しておく必要がある。
今回は、加湿量の計算方法の基礎的内容を紹介する。
加湿とは
加湿とは、外気導入空気もしくは室内空気に水分を付加させることである。
水分を付加させることで、室内空気の乾燥を防ぐことができる。
冬期の外気条件
暖房が必要な時期は、外気の絶対湿度が室内の絶対湿度よりも低いことが特徴だ。
そのため、ある程度加湿をしてあげないと乾燥した空気が室内を循環することとなる。
加湿をしないと?
下図にインフルエンザ警戒計を紹介する。
赤色に近づくほどインフルエンザに対して、警戒する必要がある。
つまり、温度および相対湿度が低いほどインフルエンザが流行しやすい。
また、絶対湿度が低いほどインフルエンザが流行しやすい。
加湿量・噴霧量の計算方法
計算方法のフロー
まずは、室内と屋外の空気条件を設定する。
設定した空気条件の絶対湿度を確認する。
また、風量や、熱交換効率、安全率を確認する。
これらの条件により加湿量を計算する。
さらに、加湿効率を確認したのちに、噴霧量を算定する。
加湿量の計算
加湿量の計算方法は以下の式で算定可能だ。
熱交換効率は熱交換器を介して外気を導入する場合に使用する。
加湿量の計算方法 | |
---|---|
加湿量[kg/h] = 空気密度[kg/m3] x 風量[CMH] x 絶対湿度差[kg/kg] x (1-熱交換効率[%]/100) x 安全率 | |
加湿量[kg/h] = 1.2[kg/m3] x 風量[CMH] x 絶対湿度差[kg/kg] x (1-熱交換効率[%]/100) x 安全率 |
噴霧量の計算
噴霧量の計算方法は以下の式で算定可能だ。
建築設備設計基準によれば、加湿効率は40%とされている。
噴霧量の計算方法 | |
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噴霧量[kg/h] = 加湿量[kg/h] ÷ (加湿効率[%] ÷ 100) |
計算例
例えば、風量を1,000m3/h、加湿効率を40%、熱交換効率を0%(全熱交換器を設置していない想定)、安全率を1.2と設定する。
また、外気を0℃、50%とし、室内空気を22℃、40%と設定する。
その時の外気絶対湿度は0.0019kg/kg、となり、室内空気の絶対湿度は0.0066kg/kgとなる。
設定された条件より、絶対湿度差は0.0066kg/kg-0.0019kg/kg=0.0047kg/kgとなる。
また、必要加湿量と噴霧量は以下のとおりとなる。
加湿量の計算 | |
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加湿量[kg/h] = 空気密度[kg/m3] x 風量[CMH] x 絶対湿度差[kg/kg] x (1-熱交換効率[%]/100) x 安全率 | |
加湿量[kg/h] = 1.2[kg/m3] x 1,000[CMH] x 0.0047[kg/kg] x 1.2 = 6.8[kg/h] |
噴霧量の計算 | |
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噴霧量[kg/h] = 加湿量[kg/h] ÷ (加湿効率[%] ÷ 100) | |
噴霧量[kg/h] = 6.8[kg/h] ÷ (40[%] ÷ 100) = 17.0[kg/h] |
加湿量算定のための外気条件と室内条件
加湿量算定のための外気条件と室内条件は、自治体の保健所によって、あらかじめ設定されている場合がある。
例えば、東京都では以下のとおり設定されている。
また、安全率を1.2倍することも必須となっている。
空気 | 乾球温度 | 相対湿度 |
---|---|---|
外気 | 0℃ | 50% |
室内空気 | 22℃ | 50% |
まとめ
今回は、加湿量の計算方法の基礎的内容を紹介した。
加湿量の計算方法を行うにあたって、外気と室内空気の条件設定によって、大きく結果が変わってしまう。
結果、設計の手戻りが発生する可能性がある。
そのため、特にビル管法に適合する必要がある場合は十分注意が必要だ。
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