COPと一次エネルギー換算COPの算出方法

こんにちは。

最近では特に建物の省エネルギー化が求められることが多い。
消費エネルギー量としては空調が多くを占めることから、省エネといえば空調といったイメージを持つ方も少なくない。
エコな空調設備を計画するにあたって、COPを考慮することはとても大切だ。
COPが良いと単純にその分省エネにつながるためだ。

今回はCOPの意味と計算方法、また一次エネルギー換算COPについて紹介する。

COPとは

COPとは
COP = 成績係数
COP =
定格能力[kW] ÷ 定格消費電力[kW]

COPとはCoefficient of Performanceの略で成績係数を示す。
成績係数とは消費電力1kWあたりにどれだけの能力を発揮することができるかを示す。

COPの算定方法

例えば、定格冷房能力が180kWで定格消費電力が50kWの場合は
COP = 180[kW] ÷ 50[kW] = 3.6
となる。

冷房時のCOPと暖房時のCOP

項目冷房時暖房時
定格能力85kW90kW
定格消費電力20.5kW22kW
定格COP4.154.09

ほとんどの場合において、冷房時のCOPと暖房時のCOPは異なる。
例えばダイキンのモジュールチラー (機種名:UWXY85FB)では左表の通り、冷房時と暖房時の定格COPが異なる。

COP = 1 とはどのような状態か

COP=1とは能力と消費電力が等しいという状態を示す。
つまり、エネルギー投入した分だけそっくりそのままエネルギーが出力される状態だ。
例えば、電気ドライヤーを想像するとわかりやすいだろう。
投入された電力が熱に置き換えられて出力されている。
このような状態がCOP=1となる。
(厳密には熱ロスが発生しているかと思われるためCOP<1となるが)

パッケージエアコンやチラーがCOPが高い理由

出典:一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター

パッケージエアコンやチラーはヒートポンプを使用した空調を行っている。
ヒートポンプとは冷媒の膨張と収縮による温度変化を利用し、外気と冷媒の熱交換、室内空気と冷媒の熱交換を効率的に行う技術だ。
これによって、わずかな電力で多くの熱(能力)を発生させることが可能となる。

一次エネルギー換算COP

一次エネルギー換算COPとは

普段使用している電力は発電所を介して供給される。
つまり、本来効率を示すのであれば電力が作られてから実際に消費されるまでに発生したエネルギー量で効率を表す必要がある。
これを一次エネルギー換算COPという。

一次エネルギーと二次エネルギー

一次エネルギーと二次エネルギーとは下図で示される。
二次エネルギーとはあくまでも建物内で消費した電力だけを示す。
一方で一次エネルギーとは、化石燃料から電気が作られる過程や、各建物までの送電等を示す。

一般的に各メーカーが公開しているCOPといえば二次エネルギーのみに絞った数値である。
そのため、一次エネルギーを含んだCOPではないことが特徴だ。

一次エネルギー換算COPの算出方法

一次エネルギー換算COPは以下の式で求めることができる。

一次エネルギー換算COPの算出方法
一次エネルギー換算COP = COP ÷ 一次エネルギー換算係数[kJ/kW] x 単位換算[kJ/kW]
※単位換算は3,600[kJ/kW]
一次エネルギー換算係数
昼間9,970kJ/kW
夜間9,280kJ/kW
省エネ法で用いられる数値9,760kJ/kW(2022年まで)
8,640kJ / kW(2023年から)

※8,640kJ/kWは現状見通しが示された段階

一次エネルギー換算COPの計算例

例えばCOPが3.6であれば、
一次エネルギー換算COP = 3.6 ÷ 9,760[kJ/kW] x 3,600[kJ/kW] = 1.33
となる。

なお一次エネルギー換算計数を8,640kJ/kWとした場合は一次エネルギー換算COPは1.5となる。

一次エネルギー換算COPを算出する理由

一次エネルギー換算COPを算出する理由は、電力と電力以外の燃料(ガスや油)のどちらがどの程度効率が良いかを比較することが一つ挙げられる。
他にも原油換算(一次エネルギー換算と同義)することで、実際にどの程度のエネルギーを使用したのか把握することができることも大きいだろう。

(余談)CO2排出量

電気は電気を作る事業者によって発電効率が異なる。
この効率をCO2排出量へ換算するための係数をCO2排出係数という。
CO2排出係数は[t-CO2/kWh]で示される。
つまり、1kWhあたりにどれだけのCO2を発生させたかといった係数となる。
CO2排出係数は、発電の方式によっても異なり、電力需要によっても異なる。
また、太陽光発電や風力発電といった自然エネルギーの導入量によっても左右される。
CO2排出係数が小さいほど、効率がよい、つまりエコということになる。

またCO2排出係数は下図の通り、算出される。

電気事業者ごとの実排出係数および調整後排出係数の算出および公表についてによればCO2排出係数の算定条件は

発電の際に発生したCO2排出量 ÷ 発電した電力量 ではなく
発電の際に発生したCO2排出量 ÷ 各事業者で消費した電力量 となる。

CO2排出量を計算する際には注意されたい。

CO2排出量の算定方法はこちらで紹介しているため、ぜひご確認いただきたい。

まとめ

今回はCOPの意味と計算方法、また一次エネルギー換算COPについて紹介した。
国が省エネ化、ZEB化、カーボンニュートラルを要求している。
設備設計者としてもこれらの内容は確実に押さえておく必要がある。

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