こんにちは。
最近では、建物の省エネ性が求められることが多い。
特に建物のZEB化やカーボンニュートラルといった用語が業界内ではよく飛び交う。
建物の省エネ化の動向を受け、省エネ技術の一つであるナイトパージも最近では効くことも多い。
しかし、ナイトパージは決してメジャーではない省エネ技術であるため、よくわかっていない方も多いだろう。
今回はナイトパージの概要と計画上の注意点を紹介する。
ナイトパージとは
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ナイトパージとは夜間に外気を室内へ取り込み、室内の蓄熱負荷を処理することだ。
まだ、ナイトパージ自体が定量化されていないため、室内の蓄熱負荷の範囲が定かにはなっていない。
簡単に言えば、夜間のうちに冷たい外気を用いて、室内を冷却することをナイトパージと呼ぶ。
ナイトパージの熱負荷の処理対象
ナイトパージによる蓄熱負荷処理の範囲 | |
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室内空気の入れ替え | |
躯体に溜まった蓄熱の処理 |
ナイトパージによる蓄熱負荷の処理範囲については大きく左表のとおり、2種類に大別することができる。
筆者の感覚としては室内空気の入れ替えのみならず、躯体に溜まった蓄熱の処理もナイトパージによる効果と見込んで差し支えがないと考える。
ナイトパージの省エネ効果
設計時からナイトパージを積極的に見込む場合は、ナイトパージによる省エネ効果の試算を求められることがある。
しかし、前述の通り、省エネ技術としてはまだ確立していないことが現状だ。
定義自体も曖昧であることを踏まえると、省エネ効果の算出は現時点では難しいと言わざるを得ない。
また、ナイトパージの効果の算定にあたっては、躯体に溜まった蓄熱量の算出が必須だが、現時点では、蓄熱量自体算出することが困難であることも挙げられる。
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可能性としては、左図に示す通り、ナイトパージによって建物の立ち上がり負荷を抑制することができる。
そのため、立上り負荷分がナイトパージによる省エネ効果だと考えることができるだろう。
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もしくは、普段からのナイトパージの実施によって、建物全体の熱負荷が若干低減するといったことも考えられるかもしれない。
ナイトパージの運転方式
ナイトパージの運転方式 | |
---|---|
① | 自然換気 |
② | 機械換気 |
ナイトパージの定義自体が曖昧であるため、現時点ではナイトパージの運用方法としては左表が考えられるだろう。
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自然換気の場合は、例えば自然換気口を用いる方法が考えられるだろう。
日中に行う自然換気用の外気取込口と排気口をナイトパージを行う際にも併用することで、ナイトパージを行うことが可能だ。
自然換気と同様に風向や風速に依存するため、意図した効果が得られない可能性もある。
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機械換気でないとパージを行う方法としては、例えば空調機を用いる方法が考えられる。
空調機内に設置のファンを使用して強制的に空気を室内へ供給する。
空調を行うわけではないので、空気の状態によって、室内環境は成り行きとはなるが、自然換気よりも省エネ効果が大きいと考えられる。
ナイトパージの制御方法
ナイトパージの制御方法 | |
---|---|
① | 温度制御 |
② | 温度、湿度制御 |
③ | 温度、湿度、エンタルピー制御 |
ナイトパージの運転方式は大きく3種類の方法が考えられる。
温度制御は外気の温度条件により、外気を取り込むかどうかを制御する。
温度、湿度制御は外気温度および外気湿度によって制御を行う。
(相対湿度とするか絶対湿度とするかでさらに方法が細分化される)
さらにエンタルピー制御を加える方式も考えられる。
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温度制御だけの場合は、比較的高湿度の空気も導入することとなる。
また、温度は下がっても、室内設計空気よりも高いエンタルピーの空気が導入することを良しとするかといった判断が求められる。
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温度・相対湿度による制御を行う場合は、先ほどの温度制御のみの場合とは異なり、湿度に配慮した方式となる。
しかし、室内設計空気よりも高いエンタルピーの空気が導入することに変わりはない。
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温度・絶対湿度制御であれば、湿度の心配を気にすることなく、ないとパージを行うことができる。
しかし、ナイトパージを行う範囲が絞られているため、ナイトパージによる省エネ効果が小さくなる。
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温度・相対湿度・エンタルピー制御は、室内設計空気よりも低いエンタルピーのみを対象とした制御となる。
高湿度の空気が流入する可能性は残るものの、温度・絶対湿度制御よりもナイトパージの運転可能時間は長いといった特徴がある。
ナイトパージの注意点
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ナイトパージについて、よくある事例は、朝事務所に来たら書類が湿っていたといったことだろう。
夜間に湿度の高い空気が室内に流入することで、室内環境が悪化する。
室内環境が悪い状態が、長時間にわたって続くことが大きな理由だ。
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室内が高湿度な環境が長時間続くと、カビが発生する可能性もある。
そのため、湿度には特に注意して、ナイトパージを計画することが大切だ。
まとめ
今回はナイトパージの概要と計画上の注意点を紹介した。
ナイトパージはまだ、現状未評価の技術だ。
そのため、ナイトパージを計画する際は、様々な要素(方式や制御等)やトラブルを意識する必要があるだろう。
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