こんにちは。
普段なんとなく設定している暖房時の熱源の送水温度。
特に最近ではモジュールチラーが使われることが多い。
ボイラーや温水発生機であれば55~60℃程度が標準だが、モジュールチラーの標準的な暖房時の送水温度は45℃だ。
特に暖房負荷が大きくなる傾向にある寒冷地など、空調二次側の条件によっては、熱源の送水温度が45℃だと空調が難しいケースがある。
今回は、冬期の空調機の吹き出し温度と熱源の送水温度の関係について紹介する。
建築設備設計基準における熱源の冷温水出入り口温度は下表の通りとなる。
出入口温度差が5℃ではあるが、大温度差空調とした場合においても、冷温水出口温度は変わらない。
吸収冷温水機の温水出口温度は標準で55℃であることに対し、空気熱源ヒートポンプユニットは45℃である。
熱源の送水温度 | ||||
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機器 | 冷水温度 | 温水温度 | ||
出口 | 入口 | 出口 | 入口 | |
圧縮式冷凍機 | 7℃ | 12℃ | – | – |
空気熱源ヒートポンプユニット | 7℃ | 12℃ | 45℃ | 40℃ |
一重効用吸収冷凍機 | 7℃ | 12℃ | – | – |
二重効用吸収冷凍機 | 7℃ | 12℃ | – | – |
吸収冷温水機 | 7℃ | 12℃ | 55℃ | 50℃ |
吸収冷温水機ユニット | 7℃ | 12℃ | 55℃ | 成行 |
出典:建築設備設計基準
冬期の設計用外気温度が-5℃以下の場合、温水出入口温度を記載の数値から+5℃する。
(但し、空気熱源ヒートポンプユニットの温水入口温度は成行とする。
暖房時における空調機の加熱プロセス
左図に暖房時における空調機の加熱プロセスを示す。
室内空気と外気を混合し、空調機内に設置の温水コイルを通過する。
その後、空気を加湿し空調空気として室内へ給気される。
空調機出口温度の傾向
空調機の送風量は通常、冷房時の熱負荷より計算して求める。
つまり、暖房時における空調機の計算においては、送風量がすでに確定している。
そのため、暖房負荷が大きいほど空調機出口温度が高くなる傾向にある。
暖房負荷と空調機の吹出温度の関係 | |
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暖房負荷:大 | 暖房時の空調機吹出温度:高 |
暖房負荷:小 | 暖房時の空調機吹出温度:小 |
暖房時の空調機温水コイル出口空気
暖房時の空調機出口空気が32℃の場合の空気線図を上図に示す。
空調機出口空気が32℃ということは、室内の設計温湿度が22%40%の場合は、温度差が10℃となる。
つまり、暖房負荷が大きい場合は決して不思議な数値ではないことがイメージできるだろう。
空調機出口空気から考え得る空調機温水コイル出口空気について、オレンジの波線で示した。
(水加湿の場合は空調機出口空気と等エンタルピーの位置となる。)
また、参考として、建築設備設計基準に記載の札幌の冬期外気温湿度を併せてプロットした。
還気と外気の割合によっては、空調機加熱コイル出口空気が45℃に近い値となることが想定される。
つまり、モジュールチラーの温水出口温度とほとんど変わらない温度の空気を作り出す必要があることが考えられる。
温水コイル出口空気温度と熱源機送水温度の温度差
温水コイル出口空気温度と熱源機送水温度の温度差が大きいほど温水コイルのサイズが小さくなる。
温度差が小さいほど大量の温水が必要となることと、空気温度を上昇させづらくなることが理由だ。
温水コイル出口空気温度と熱源機送水温度の温度差 | |
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温度差:大 | 温水コイルの寸法:小 |
温度差:小 | 温水コイルの寸法:大 |
前項で紹介した、45℃の温水で45℃の空気を作り出すことは至難の業だ。
45℃の空気が少しでも空気と熱交換をすると温水温度が45℃から低下する。
45℃未満の温水と空気が熱交換をしても45℃にはなりえないためだ。
そのため、寒冷地や特殊な条件下でモジュールチラーを使用する際には、熱源機温水出口温度を45℃よりも上昇させる必要がある可能性がある。
まとめ
今回は、冬期の空調機の吹出温度と熱源の送水温度の関係について紹介した。
寒冷地や、特殊な条件下でモジュールチラー等の温水出口温度が低い機器を採用する場合は、十分に注意して設計する必要がある。
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