【機械設備編】トイレ廻りの配管計画を紹介 -給水管、排水管および通気管の計画を紹介

こんにちは。

建物にはほぼ必ずと言っていいほど水廻りが計画される。
その中でもトイレの配管計画は比較的複雑になりがちだ。
トイレ内は給水管や排水管および通気管が複雑に交差する。
また場合によっては洗面器廻りに給湯管も必要なケースが多い。

今回はトイレ廻りの配管計画の方法について紹介する。

項目内容担当・伝達の流れ
その1衛生器具の必要数量を確認意匠
その2PSの必要寸法を要望機械設備⇒意匠
その3衛生器具の配置計画意匠
その4衛生器具へ接続される配管の納まりを確認意匠・機械設備
その5ふかしなど追加で必要な設備スペースを確認機械設備⇒意匠
その6衛生設備の配管計画機械設備

その1 衛生器具の必要数量の確認

出典:LIXILカタログ

衛生器具の必要数量は建物の使用人数により決められる。
具体的には「空気調和・衛生工学会規格 SHASE-S206-2019給排水衛生設備規準・同解説 技術要項・同解説「衛生器具の設置個数の決定」」による。

上記文献に基づき各衛生器具メーカーが左図のようなサービスレベル、利用人員別の必要器具数を算定している。 
これら情報に基づき衛生器具の必要数量を確認する。

その2 PSの必要寸法の確認

出典:建築設備計画基準 (記載の内容を一部加工)

建築設備計画基準によればPSの必要寸法は左図の通りとなる。
ポイントとしてはAを求める際に使用する配管径は保温を含む外形サイズであること。
またPS用の点検口がない部分ににバルブ等を設ける場合はPS内を歩けるように600mm以上の点検スペースを確保する。

その3 衛生器具の配置計画

今回のトイレ配管計画に使用する建築図を以下に紹介する。
男子便所(大便器x3、小便器x3、洗面器x3)および女子便所(大便器x3、洗面器x2)とした。
また便所掃除用のSKおよび配管ルートを確保するためPSも設置した。
(なお建築計画について不思議な点やおかしな点などは目を瞑ってほしい)

その4 衛生器具へ接続される配管の納まりの確認

建築的な配置計画がいったん完了した後に、機械設備的目線から衛生器具へ接続される配管の納まりについて確認を行う。
衛生器具からの配管の納まりを検討するにあたり以下の点を踏まえて検討する必要がある。

項目内容担当・伝達の流れ
衛生器具大便器床排水と壁排水のどちらの衛生器具を採用するか
大便器床排水と壁排水のどちらの衛生器具を採用するか
給水管天井と床下のどちらから供給するか

大便器の選定

大便器は大きく分けて2種類ある。
(細分化すると3種類)

種類
床置大便器床排水
壁排水
壁掛大便器壁排水

この中でも特に床排水の衛生器具とするか壁排水の衛生器具を選定するのかによって納まりが大きく変わる。
床排水の場合は大便器の配置によって排水芯の位置が自動的に決定される。
つまり大便器の設置位置と梁の位置が平面的にかぶっていてはならない。

一方で壁排水の大便器であればライニング内に排水管を計画することができる。
そのため多少であればライニング内で排水管を横引きすることが可能だ。
だが壁掛大便器からの排水芯も決して余裕があるわけではない。
大便器3つ程度の排水横引きであれば問題とならないことは多いが、十分注意して排水計画を行う必要がある。

また必要なライニング幅について紹介する。
TOTOおよびLIXILのカタログにはいずれもライニング幅は250mm以上と記載されている。
(衛生器具により若干寸法が変わる。)
最近の傾向としてフラッシュバルブをライニング内に埋め込む事例が多いからだろう。

小便器の選定

小便器も大便器同様に大きく分けて2種類ある。
(細分化すると3種類)

種類
床置小便器床排水
壁排水
壁掛小便器壁排水

この中でも特に床排水の衛生器具とするか壁排水の衛生器具を選定するのかによって納まりが大きく変わる。
細かくは大便器と同様なので割愛するが衛生器具により排水管の納まりを注意する必要がある。

また必要なライニング幅について紹介する。
TOTOのカタログにはライニング幅は200mm以上と記載されている。
一方でLIXILのカタログにはライニング幅は220mm以上と記載されている。
(衛生器具により若干寸法が変わる。)

給水管を天井配管とするか床下配管とするか

大便器や小便器、洗面器等への給水配管を天井配管とするか床下配管とするかで納まりが大きく変わる。

天井配管の場合は比較的衛生器具に対するレイアウトは自由になる。
だが何も対策をしないと給水配管が露出することとなってしまう。
それを避けるためにふかし壁(配管用のスペース)を設けて対応することが多い。

一方で床下配管の場合は天井配管のように露出することはまず考えづらい。
(ライニングを設けない場合は露出となるが)
だがその代わりに床下の梁の位置と大便器の位置を確認する必要がある。
梁がある場所には給水管を計画することができないので注意が必要だ。

平面図に色塗りするとわかりやすい

配管と梁との干渉については下階の梁の位置を実際に平面図に図示し着色するとわかりやすい。
以下に参考図を示す。
以下の図では小便器が一見すると干渉しているようにも見受けられる。
だが壁排水の小便器とすることで小便器右側のふかし壁で排水管を立下げることが可能だ。
その他については大きな問題はないだろう。

その他 納まりの解消について

衛生配管と梁の干渉については以下の記事でも詳しく紹介している。
そのため興味がある方は以下のリンクからご確認頂ければと思う。

その5 ふかし壁など必要なスペースの調整

前項にて大きな問題を一式解消したのちに、次にふかし壁など必要なスペースの調整を行う。
特に天井配管で給水管を計画する場合は要所に必要となる。
また通気管の立ち上げ位置についても検討し必要に応じて平面図へ反映する必要がある。

その6 衛生設備の配管計画

次に衛生設備の配管図について作図を行う。
その1~その5までで十分に検討を重ねていれば作図の段階でも特段の問題はないはずだ。
検討が不十分だと作図の段階でおかしな点に気づいたり、絶対に施工ができない設計図を作成することとなってしまう。

給水管の計画

今回は原則床下配管で計画する。
下図に給水配管ルート図(例)を紹介する。
(本稿の主旨とずれてしまうため配管径は記載していない)

PS内に男子便所系統と女子便所系統のバルブを設置

PS内に男子便所系統(SK含む)および女子便所系統として分岐部にバルブをそれぞれ設置する。
どちらか一方の便所をメンテナンスで使用する際に両方の便所を機能停止させないように配慮ためだ。

梁に干渉しないように給水配管を立ち上げ

梁に干渉しないように必要な位置で給水配管を立ち上げる。
前項までの検討が確実に遂行できていれば問題ないはずだ。

給水管の分岐方法に注意

給水管の分岐方法にもある一定のルールがあるため注意が必要だ。
上図の左側2つの例は特に問題のない配管分岐方法だ。
これらも注意して作図する必要がある。

排水管・通気管の計画

下図に排水配管および通気配管のルート図(例)を紹介する。
(本稿の主旨とずれてしまうため配管径は記載していない)

合流式とするか分流式とするか

特段の理由がない限りは排水管は屋内合流式で問題ないだろう。

通気管の数量が最小となるように計画を行う

排水管の計画の方法によっては通気管が大量に発生してしまう。
通気管は排水管末端の衛生器具から2つ目の衛生器具が合流する前に設ける必要がある。
(言葉だけだとわかりづらいので左図を確認頂きたい。)

但し排水管に接続される大便器の数量によっては別途追加で通気管を設ける必要がある。
そのため注意が必要だ。

梁と配管が干渉しないように計画を行う

梁に干渉しないように配管計画を行う。
前項までの検討が確実に遂行できていれば問題ないはずだ。

衛生配管平面図

給水配管と排水配管、通気配管を重ねた図を以下に紹介する。
通常は以下の図のように給排水通気が一枚の図面に描かれることが多い。

まとめ

今回はトイレ廻りの配管計画の方法について紹介した。

特にトイレは様々な配管が複雑に計画されることが多い。
そのため混乱しやすいことも確かだ。
本稿を参考に基本を一つ一つ身につけていけば頂ければと思う。

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