熱源容量低減によるBEIの値推移

こんにちは。

近年では、省エネ法の改正に伴い、より一層建物の省エネ化が求められている。
省エネ技術といえば、外気量制御や変流量、変風量制御等様々な方法がある。
しかし、熱源容量を適正化することによる省エネ効果については知らない方も少なくない。

今回は熱源容量とBEIの関係について紹介する。

省エネ法の基準値

建築研究所が公開しているサンプル建物(事務所)では、基準消費エネルギー量は下図のとおり構成されている。
基準消費エネルギーの約50%が空調設備で構成されていることが特徴である。

基準消費エネルギー量
設備 MJ/m2・年
空調設備 850.45
換気設備 67.14
照明設備 406.58
給湯設備 13.48
昇降機設備 16.49
その他 355.21
合計 1,709.28

熱源容量を低減する方法

熱源容量を低減する方法としては、外皮性能の向上や、室内負荷の見直しのほか、設計上の安全率の見直し、同時使用率の考慮などが挙げられる。

外皮性能とは、外皮廻りの断熱性能を向上させることを指す。
具体的には断熱材・断熱厚さの見直しが挙げられる。
他にも、窓性能の向上が挙げられる。

室内負荷の見直しとは、熱負荷を構成する人体負荷や、什器負荷等の見直しが挙げられる。

設計上の安全率といえば、熱負荷計算上の安全率の見直しや、熱源機器の保障係数の見直し等が挙げられる。

同時使用率とは、建物全体の最大同時外気導入量の見直しによる外気負荷の見直しや、室同時使用の考慮が挙げられる。

熱源容量の低減手法
外皮性能の向上 外皮廻りの断熱性能向上、窓性能の向上
室内負荷の見直し 熱負荷を構成する人体負荷や什器負荷等の見直し
設計上の安全率の見直し 熱負荷計算や熱源機器選定の安全率の見直し
同時使用率の見直し 最大外気導入量の見直しや室同時使用の見直し

ケーススタディ

比較検討としては、冷温水発生機の場合とモジュールチラーの場合の2種類を検討する。
冷却能力ならびに加熱能力を5%ずつ低減させ、そのときのBEIを確認する。
また、COPが変動しないように、熱源機のガス消費量ならびに消費電力を変更する。
さらに熱源補機類の能力を熱源容量より按分し算定する。

比較項目 熱源機 台数 冷却能力 加熱能力
基準 冷温水発生機 2台 703.00kW 588.00kW
ケース1-1 冷温水発生機 2台 667.85kW 558.60kW
ケース1-2 冷温水発生機 2台 632.70kW 529.20kW
ケース1-3 冷温水発生機 2台 597.55kW 499.80kW
ケース1-4 冷温水発生機 2台 562.40kW 470.40kW
ケース2-1 空冷モジュールチラー 12台 117.17kW 98.00kW
ケース2-2 空冷モジュールチラー 12台 111.31kW 93.10kW
ケース2-3 空冷モジュールチラー 12台 105.45kW 88.20kW
ケース2-4 空冷モジュールチラー 12台 99.59kW 83.30kW

冷温水発生機の容量による比較

冷温水発生機の熱源容量低減に伴い、空調設備のエネルギー消費量が低減しBEIも低減していることが確認できる。

比較項目 BEI 空調設備
MJ/m2・年
基準 1.02 955.59
ケース1-1 1.01 937.68
ケース1-2 0.99 921.00
ケース1-3 0.98 905.94
ケース1-4 0.97 891.44

空冷モジュールチラーの容量による比較

空冷モジュールチラーの熱源容量低減に伴い、空調設備のエネルギー消費量が低減しBEIも低減していることが確認できる。
しかし、BEIに着目すると、低減の幅についてはわずかである。

比較項目 BEI 空調設備 MJ/m2・年
ケース2-1 0.84 706.51
ケース2-2 0.83 702.07
ケース2-3 0.83 697.63
ケース2-4 0.83 695.89

まとめ

今回は熱源容量とBEIの関係について紹介した。
熱源容量の低減により、BEIは向上することが確認された。
しかし、ただ闇雲に熱源容量を低減してしまうと、熱容量が不足する可能性がある。
そのため、熱源容量を低減する際には十分注意されたい。

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