事務所用途の省エネ施策とBEI値の推移

こんにちは。

近年、省エネ法の改正により、省エネ基準がより厳格化された。
省エネ基準の引き上げに伴い、より省エネに考慮した設備計画を行う必要がある。
しかし、どの程度の省エネ化を図ればどの程度BEI(省エネ法上の年間エネルギー消費量基準値に対する、想定される年間のエネルギー消費量の割合)となるのかをイマイチ理解できていない方も多い。

今回はBEIの意味ならびに事務所用途における省エネ施策とBEIの推移について紹介する。

BEIとは、省エネ法上の年間基準エネルギー消費量に対する、想定される年間のエネルギー消費量の割合を示す。

BEIの算出方法
BEI = 想定されるエネルギー消費量 / 基準エネルギー消費量

基準エネルギー消費量は地域により異なる

基準エネルギー消費量は地域により異なる特徴がある。
具体的には左図のとおり、地域により1地域から8地域に大別される。

基準エネルギー消費量は地域により異なる

基準エネルギー消費量は室用途と地域により異なる特徴がある。
下図に事務所用途における地域別基準エネルギー消費量を示す。
基準エネルギー消費量のうち、主に空調および給湯用途のエネルギー消費量が地域によって異なる。

エネルギー消費量は室用途により異なる

エネルギー消費量は室用途によっても異なる。
下図に6地域における事務所用途の各室基準エネルギー消費量を示す。
室用途によって、大きくエネルギー消費量が異なることが確認できる。

省エネ施策とBEI推移

条件

省エネ施策とBEIの推移を確認するにあたって、今回は事務所用途とし、標準入力法による計算とした。
また、規模は約10,000m2で7階建ての以下の室構成とした。

出典:本_H25 省エネルギー基準に準拠した算定判断の方法及び解説_非住宅_第2版

設備詳細

設備詳細
熱源機
吸収式冷温水発生機2台冷却能力703kW/台 加熱能力588kW/台
COP 1.09(冷房) 0.83(暖房)
能力:187W/m2(冷房)、156W/m2(暖房)
一次ポンプ2台消費電力7.5kW/台
冷却塔2台消費電力7.4kW/台
冷却水ポンプ2台消費電力15.0kW/台
二次ポンプ2台消費電力7.5kW/台 (5℃差) 定流量制御
空調設備
空調機14台定風量制御、全熱交換器無
ファンコイルユニット8台
パッケージエアコン4台
全熱交換器4台熱交換効率:60%
換気設備
給排気ファン40台定風量制御
照明設備
各種照明1,736台11.5W/m2
給湯設備
ガス給湯器1台能力:20kW、効率:0.94
電気温水器28台能力:1.1kW/台、効率:0.37
昇降機設備
昇降機2台積載量800kg 速度60m/min
太陽光設備
太陽光パネル1台12.2kW、南向き、傾斜角30°

ケーススタディ

基準のモデルから、以下の条件を変更しケーススタディを行った。

項目変更内容
変更前変更後
0_基準
1-1_冷温水発生機高効率化冷房時COP:1.09 暖房時COP:0.83冷房時COP:1.35 暖房時COP:0.89
1-2_台数制御熱源台数制御無、二次ポンプ台数制御無熱源台数制御有、二次ポンプ台数制御有
1-3_モジュールチラー冷温水発生機モジュールチラー
1-4_二次ポンプ変流量二次ポンプ定風量制御二次ポンプ変風量制御
1-5_大温度差温度差5℃、一次ポンプ7.5kW、二次ポンプ7.5kW温度差7℃、一次ポンプ5.5kW、二次ポンプ5.5kW
2-1_空調機INV事務室系統空調機_定風量制御事務室系統空調機_変風量制御
2-2_空調機全熱交換器事務室系統空調機_全熱交換器無事務室系統空調機_全熱交換器有
2-3_空調機外気取り入れ停止事務室系統空調機_外気取り入れ停止無事務室系統空調機_外気取り入れ停止有
2-4_空調機外気冷房事務室系統空調機_外気冷房無事務室系統空調機_外気冷房有
4-1_LED化LED化
4-2_在室検知制御トイレ、給湯室、更衣室_在室検知制御無トイレ、給湯室、更衣室_在室検知制御有
4-3_明るさ検知制御事務室_明るさ検知制御無事務室_明るさ検知制御有
4-4_初期照度補正初期照度補正無初期照度補正有
5-1_給湯配管保温高断熱化保温仕様2保温仕様1
6-1_昇降機効率VVVF(電力回生なし)VVVF(電力回生あり、ギアレス)
7-1_太陽光発電システム容量12.2kWシステム容量24.4kW

各省エネ施策とBEI、一次エネルギー消費量推移

省エネ施策別のBEIおよび一次エネルギー消費量の推移を示す。
より多くの省エネ施策を建物に導入するほど、BEIおよび一次エネルギー消費量が低下していることが確認できる。

一次エネルギー消費量低減割合

下図に一次エネルギー消費量の低減割合を示す。
各省エネ施策を導入することで、空調設備並びに照明設備の一次エネルギー消費量が低減されていることが確認できる。

一次エネルギー消費量割合

一次エネルギー消費量割合を下図に示す。
省エネ施策を導入することで、空調設備ならびに照明設備の一次エネルギー消費量割合が低下していることが確認できる。

まとめ

今回はBEIの意味ならびに事務所用途における省エネ施策とBEIの推移について紹介した。
今後特にZEB oriented や ZEB ready が求められるケースが増えてくる。
そのため、どのような省エネ施策をどの程度導入すれば、これらの基準に到達するかを感覚的に掴むことも大切である。

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