熱負荷計算 -空調非空調空間の境において壁や天井がない場合の計算方法-

こんにちは。
設備設計者は各室の熱負荷を常に拾い空調能力を算定する日々だ。
そんな熱負荷計算を行う場合において通常は室が四方八方閉じられていることが常である。
当然のことながら建物はシェルターの役割をしているため基本的に雨風が入ってこないように閉じられた空間であることが基本だ。
ただそんな中近年では少しでも人に快適に過ごしてもらうためにこそ設計時から内壁や天井の仕様にこだわるケースが増えている。
例えば室と室が間仕切りでつながっておらず建具なしに直接人が行き来できる空間やルーバー天井により天井裏と居住空間とが間接的につながっている場合だ。

上記のような場合において熱負荷計算上どの程度変動するかを紹介する。

 

境界条件

仮想空間を用いて今回の検討を行う。
当然条件により居住空間と非居住空間の考え方が異なるとは思うが検討を比較的容易にするため今回はルーバー天井の有無にて比較することとする。

図中左がいわゆる一般的な天井を貼る場合だ。
天井下と天井裏のいわゆる空調空間と非空調空間を天井のボードにて完全に仕切るような形とした。
一方で図中右がルーバー天井とする場合を想定した。
CH2.7mHのところにルーバー下端を設定しルーバーのための下地をその上部に流している。
一見天井下と天井裏が完全に仕切られているように見えるが実際には格子状にに鋼材を流していることとする。
そのため天井下と天井裏は完全につながっている。
絵には起こしていないがいずれの場合も空調方式はダクト吹き空調(パッケージ形空調機による空調)とする。
天井裏に隠ぺい形室内機を設置し給気ダクトおよび還気ダクトともにCH2.7mHに下向きに設置とする。
階高は一律共通で4,000mmHとし天井高さは2.7mHとする。
また室面積は5m x 5m = 25m2とする。

続いて各壁体条件について。
図を確認していただいた通りだが、極力計算自体を簡略化するため壁面はいずれも面も内壁とした。
また床面についてもB1Fがあることを想定したものとした。
天井面は今回の検討のクリティカルになる部分なのでケース別に記載をしている。

①天井を貼る場合は床面に記載の仕様と同等とし熱貫流率は1.7W/m2・K

続いてルーバー天井の場合についてはさらに2つの条件に分けることとする。

②直天扱いとし①の天井計算からボードとロックウールを除くこととする。
熱貫流率は3.0W/m2・K
(つまり天井裏も空調空間と考える)

③ルーバー天井上部を非空調空間ととらえ内表面熱伝達率で空気層を挟むような熱負荷計算とする。
熱貫流率は3.4W/m2・K

ルーバー天井の場合の天井裏の扱い -余談-

前項で紹介した境界条件の②と③で何が違うのかについて説明する。

②は天井裏を空調空間と考えた場合だ。
天井裏を空調空間と考えると空調を行う空間は天井裏の上階床までが対象となる。
従って天井裏の内壁も熱負荷計算の範囲の対象となる。

一方で③は天井裏を非空調空間と考えた場合を示している。
天井裏を非空調空間と考えると空調を行う空間はルーバー天井より下部にしかなりえない。
そのため内壁からの熱負荷は天井面までが評価の対象となる。
その際にどのようにルーバー天井部分を評価するか。
本来の熱負荷計算は基本的に閉じられた空間だ。
そのため何らかの材料を見込み熱貫流率を算出する必要がある。
もともと内壁の熱貫流率を算出する際は必ずそれぞれの内壁外側に内表面熱伝達率を見込むこととなっている。
実際には材料は全く存在しないためその間に空気層を挟み計算を行う。

但し以下の理由から通常は天井裏の空間を非空調空間と見込むことが多い。
例えば天井裏空間を空調空間とする際に本来であればどの空間までを空調空間と見込むことが非常にあいまいだ。
というのも内壁が天井裏まで上がっていれば境界条件②の計算でも良いかもしれない。
しかしもし遮音や耐火性能を求められない室出る場合は天井裏まで内壁が立ち上がらないケースが起こる。
その場合にどのように天井裏での空調空間と非空調空間を整理すればよいのかといった問題が解決していないこととなるからだ。

上記の②と③についてどの程度熱負荷計算が変わってくるかについては後項で紹介することとする。

ケース別熱負荷計算

まずは境界条件①の場合を計算した。
国交省の熱負荷計算と概ね同じフォーマットであるため特段読み方に困ることはないかと思うが念のため以下に説明する。
左から各構造体の種類を記載し熱貫流率に面積を乗じてKAを算出した。
某所においての夏期および冬期の温度差は図中の通りなのでそれぞれKAに温度差を乗じて熱負荷を算出した。
なお①の場合は天井を貼る場合における検討のため内壁①~④の辺2の部分には天井高さを記載して計算した。
結果夏期は約0.13kWで冬期は1.51kWとなった。

次に境界条件②の場合について試算した。
大きな違いは天井裏を空調空間を扱うことで天井面の熱貫流率が大きく上昇したところだろう。
結果冷房負荷は約0.19kWで暖房負荷は約2.14kWとなった。

続いて境界条件③の場合の試算結果を記す。
①②と大きく異なる点は熱貫流率が3.4W/m2・Kと①②の条件よりもさらに大きいことだろう。
内壁①~④については辺2を2.7mHとしている。
結果冷房負荷は約0.16kWで暖房負荷は約1.84kWとなった。

図に境界条件①~③の冷房負荷および暖房負荷をまとめた。
結果境界条件②が最も大きな値を示し境界条件①が最も小さな値を示した。

境界条件①基準でそれぞれの冷房負荷と暖房負荷の上昇率を確認すると境界条件②においては境界条件①に比べ14.1ポイント上昇、境界条件③においては境界条件①に比べ12.1ポイント上昇する結果となった。

まとめ

今回は空調空間と非空調空間の定義があいまいな室における壁体負荷の熱負荷計算およびその熱負荷の差について紹介した。
境界条件②においては境界条件①に比べ14.1ポイント上昇、境界条件③においては境界条件①に比べ12.1ポイント上昇する結果となった。
同じよう席を持った空間だとしても直接的に仕切られていない空間においては熱負荷計算結果が大きく変わるため十分に留意すべきである。

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