定格消費電力と最大電流値

こんにちは。

建物を設計する際には、意匠・構造・機械・電気といった各分野が一体となって計画を進める必要がある。
意匠は意匠だけ、機械は機械だけといったように、それぞれが独立して検討してしまうと、整合の取れた計画とすることは困難である。

ただし、分野間で協力して進める場合であっても、他分野の内容について最低限の理解と共通言語を持たなければ、情報が正確に伝わらず、結果的に整合性の取れた設計とはならない。

例えば、機械設備担当が設備機器の「消費電力」だけを電気担当へ伝達した場合、電気設計が適切に進まないことがある。
具体的には、定格消費電力だけではなく最大電流値を伝達しなければ、ブレーカーが作動したり、配線サイズに対して過大な電流が流れるといった不具合が生じる可能性がある。

今回は「定格消費電力」と「最大電流値」の違いについて紹介する。

定格消費電力の概要

定格消費電力とは

定格消費電力とはある条件下で測定した際の消費電力を示す。
例えば、パッケージエアコンの場合は、JIS B8616:2015に準拠した消費電力がカタログに記載されている。
具体的には夏期においては外気35℃DB、24℃WBの時における消費電力を示し、冬期においては外気7℃DB、6℃WBの時における消費電力となる。

定格消費電力
夏期 室内:27℃DB・19℃WB、外気:35℃DB・24℃WB
冬期 室内:20℃DB・15℃WB、外気:7℃DB・6℃WB

定格消費電力と省エネ計算

現在ではすべての建物が省エネ計算の対象であり、その省エネ計算を行うためには定格消費電力の入力が必須である。
また、空調機器においては冷房時および暖房時の定格消費電力を図面に記載する必要がある。

最大電流値の概要

最大電流値とは

設備機器には、一般的に機器銘板や仕様書に最大電流値が記載されている。

この最大電流値とは、その機器が安全かつ正常に動作できる範囲内で許容される電流の上限値を示すものである。
すなわち、設備機器側が要求する最大の電流値を意味し、定格消費電力とは大きく異なる場合が多い。

例えば、設備機器の始動時には定格消費電力を大きく上回る電流が一時的に流れることがあるが、この場合でも最大電流値の範囲内であれば問題はない。

なお、この最大電流値を継続的に超える状態で使用した場合、導体の発熱、絶縁劣化、焼損などを引き起こし、機器の寿命を著しく短縮させる恐れがある。
また、家庭用のブレーカーと同様に、規定以上の電流が流れるとブレーカーが作動し、設備機器が運転できなくなることも想定される。

最大電流値の用途

最大電流値は、主に電気設計を行う上で重要な指標として使用される。
具体的には、設備機器に記載された最大電流値を基に、ブレーカーの定格容量や配線の導体断面積を適切に選定するために用いられる。
これにより、過電流による配線の過熱や絶縁破壊を防止し、安全で信頼性の高い電気設備を構築することができる。

また、最大電流値は単にブレーカーや配線の設計に限らず、電源系統全体の負荷計算や、受変電設備の容量検討においても重要な要素となる。複数の機器を同時に稼働させる場合、それぞれの最大電流値を考慮して総負荷電流を算出し、電源設備の容量が不足しないように計画する必要がある。

まとめ

今回は「定格消費電力」と「最大電流値」の違いについて紹介した。
定格消費電力と最大電流値の違いを把握することで、電気設備担当者とよりスムーズに打ち合わせを行うことができるだろう。

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