こんにちは。
いざ設計業務を始めてみると一体どんな順序で物事を考えたらよいかわからなくなることも多い。
特に設計業務では基本計画(基本構想)や基本設計、実施設計、積算業務等設計業務の中に様々なスキームが存在する。
今回はその中でも基本設計について紹介する。
具体的に機械設備としては何を検討、決定するのかを紹介する。
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基本設計とは大きな枠組みでいえば設計の業務内に分類される。
設計は大きく基本設計、実施設計、積算に分類される。
(実際には積算は実施設計の中に含まれることが普通)
その中でも基本設計では基本的な各室の要件や建物全体での空調衛生システムを整理する期間となる。
主に以下の内容を行う。
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基本設計でやること その1 建築図の確定
①建築図を確定させる必要がある
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基本設計で決定した設備システムに基づき建築計画への反映が必要だ。
特に機械室廻りのレイアウトや天井裏空間のおさまりに影響する天井高さの設定も行う必要がある。
その他にもダクトや配管用のPS、DS等の調整も行わなければならない。
基本設計が完了する段階で建築図(平面、立面、断面)を確定させる必要がある。
原則として建築、構造、電気、機械間で不整合がない状態で実施設計に移行する必要がある。
実施設計では原則として基本設計で決定した内容に沿って図面を起こすだけの作業だからだ。
②もし実施設計で平面、立面、断面を変更すると・・・
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もし実施設計で平面、立面、断面などの情報が変わると何が起こるかを紹介する。
(最近では往々にして実施設計での起こる気がするが。)
例えば断面が変わると構造体が変わる。
構造としては基本設計の内容を積み上げて綿密に構造計算を行う。
その積み上げたものが台無しになりまた一からやり直すような変更が発生する。
機械設備も例外ではなく断面が変われば設備機器、ダクト、配管類の納まりが変わる可能性がある。
また断面の他にも平面が変われば機器のスペックを再選定する必要がある。
そのための換気計算や熱負荷計算をやり直す必要がある。
換気計算は不整合があると確認申請時(建築基準法的に建物の計画が問題ないかを確認する行為)に不整合である旨を指摘される。
熱負荷計算については部屋の容積が変わると必要な空調能力が変わる。
そのため機器選定をやり直す必要がある。
機器選定をやり直すと機器の仕様が変わり機器の荷重が変わる。
機器の荷重が変わると建物の構造体へ影響が出る。
同時に機器に必要な電源容量が変わると電気設計もやり直す必要がある。
今回紹介した内容は一例だ。
だが実施設計になってから計画に変更を加えることがどれだけ大変か想像頂けるだろう。
基本設計でやること その2 各室の仕様の決定
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建物内に配置される各室の仕様を基本設計中に決定する必要がある。
主に以下の項目について確認を行う。
確認項目 | 概要 |
---|---|
室用途 | 事務室、会議室などの室用途の確認 |
在室人員数 | 部屋の中に何人滞在するかの確認 |
空調要否 | 空調が必要かどうかの確認 |
設定温湿度 | 室内の温湿度要件の確認 (特殊室がないかどうか含めて) |
機器発熱 | 特別機器発熱が大きい機器がないか確認 (ある場合は発熱量を確認) |
水廻りの有無 | 給水排水が必要かどうかの確認 |
衛生器具 | 水廻りがある場合は衛生器具の仕様を確認 |
給湯の有無 | 水廻りがある場合は給湯を使用するかどうかの確認 |
消火 | 自主設置で消火設備が必要かどうかの確認 (ガス消火設備等) |
基本設計でやること その3 設備システムの決定
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基本設計では空調衛生の設備システムを一式決定する必要がある。
例えば空調でいえば熱源設備、空調設備をどのように構築するかだ。
設備システムは建物用途、施主側の意見、地域特性、コスト等全体を俯瞰して総合的に決定する必要がある。
例えば暖房需要がある北海道に建設する場合の空調方式。
もしくは冷房需要がある沖縄に建設する場合の空調方式。
それぞれで全く同じ空調方式となることは考えづらい。
例えば北海道で中央熱源を使用する場合はボイラー、温水発生機を使用するだろう。
個別熱源の場合は暖房増強型パッケージ、もしくはガス熱源パケージを採用することとなるだろう。
一方で沖縄の場合はほとんどの期間が冷房需要だ。
そのため中央熱源であれば例えばモジュールチラー、冷温水発生機だろうか。
個別熱源であれば電気熱源パッケージだろう。
但し沖縄の場合常に塩害が付きまとう。
そのため地域特性に配慮した計画を行う必要があることも考慮に入れる必要がある。
衛生設備においては大きく給水方式、排水方式、消火設備を決める必要がある。
給水方式は受水槽方式にするのか、それとも直結方式にするのかなど。
建物規模や使われ方を鑑みて方式を決定する。
排水方式は下水インフラが敷地周辺にあるかどうかで大きく変わる。
下水インフラがない場合は浄化槽を設ける必要がある。
これらの設備方式を一式基本設計中に決定する必要がある。
基本設計でやること その4 インフラ調査
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建物には給水源や排水先の確保が必要だ。
それらのインフラを基本設計段階で決定する必要がある。
例えば給水インフラがない場合は井戸を掘る等計画の方針が変わる。
また排水インフラがない場合は浄化槽を設置する必要がある。
排水インフラがある場合は敷地内や敷地近傍の既設排水桝調査も行う必要がある。
(建物からの排水管を高さや勾配、排水量の観点から接続可能かどうかの確認)
インフラ調査を行うことで設備方針を決定することができる。
基本設計でやること その5 行政協議
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前項でも少し触れたがインフラ調査を行う時点で行政協議が発生する。
インフラを管理している管轄が行政であることがほとんどだ。
そのためインフラを確認するためには行政協議を行う必要がある。
そしてインフラを現地調査したのちに再度設備方針について行政協議を行い、行政からの許可を得る流れとなる。
基本設計でやること その6 特徴的な内容について細かな配慮
次に行うことが実施設計を行う前に建物特有の事項についての細かな検討を行う必要がある。
例えば大きなところでいえば北海道などの寒冷地の計画を行う場合だ。
寒冷地における配慮を設備毎に検討し一枚の紙にまとめること。
そうすることでよりよい建物の設備計画を行うことができる。
基本設計でやること その7 概算算出
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基本設計でやることその1からその5までで設備システムが決定するはずだ。
設備システムが決定したのちに行うべきことが概算の算出だ。
設備設計の場合は概算時点ではダクトや配管等細かな仕様は拾わずにm2単位でいくらとなるかを算定することが多い。
m2による根拠は多くの場合は各社のノウハウで培ってきた実績値を基に算定する。
但し設備システム決定に関わる設備機器関係については一式見積を徴収し概算に反映する必要がある。
ここまでの一連の検討、決定を行うことでようやく基本設計が完了となる。
まとめ
今回はその中でも基本設計について紹介した。
具体的に機械設備としては何を検討、決定するのかを紹介した。
基本設計は設計者にとって最も能力を問われる部分だ。
また設計者にとっての生きがいを感じられるパートが基本設計でもある。
そのため事前に何を行うのかを把握した上で楽しんで基本設計を行っていただければと思う。
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