空調機の冷暖房能力の求め方 -計算方法を紹介-

こんにちは。

建物の改修案件では、空調機器の能力の確認を行うことがある。
その際に機器の仕様が全て記載されていれば特に悩むこともないが、一昔前の機器であることもあり、なかなか、全ての情報を得ることはできない。
例えば、冷温水流量と中央熱源の冷温水往還温度差しかわからない場合は、空調機の能力を計算で算出する必要がある。
もしくは空調機の給気風量と吸込・吹出温度しかわからない場合においても同様だ。

今回は、空調機の冷温水流量から空調機の冷暖房能力を算出する方法を紹介する。

基本的な熱源システムの構成を上図に示す。
空調機は室内の空気を吸込み、空調した上で室内へ再度供給する。
また、夏期であれば冷水、冬期であれば温水が、熱源機から供給され空調機で空気と熱交換を行う。

熱量算定の考え方

熱量の算定方法は大きく二種類ある。
一つが、給気風量と吸込・吹出のエンタルピー差から求める方法だ。
もう一つが、冷温水流量と冷温水往温度差から求める方法となる。
どちらで求めた場合においても最大熱量は理論上同じとなる。

給気風量と吸込・吹出エンタルピー差

給気風量と吸込・吹出エンタルピー差から求めるとは、SAの風量と吸込空気(OAとRAの混合空気)、吹出空気(SA)から求めることを意味する。
熱量の算出式は以下のとおりとなる。

熱量の算出式
(空気比熱 x 空気密度 x 風量[CMH] x エンタルピー差[kJ/kg]) / 3,600[(kJ/h)/kW]
1.0 x 1.2 x 風量[CMH] x エンタルピー差[kJ/kg] / 3,600[(kJ/h)/kW]

冷温水流量と冷温水往還温度差

冷温水配管内を流れる冷温水流量と、空気と熱交換をする前後の冷温水(往)温度、冷温水(還)温度から熱量を求めることも可能だ。
熱量の算出式は以下のとおりとなる。

熱量の算出式
(水比熱 x 水密度 x 流量[L/min] x 温度差[℃] x 60[s/h]) / 3,600[(kJ/h)/kW]
4.186 x 1.0 x 流量[L/min] x 温度差[℃] x 60[s/h]) / 3,600[(kJ/h)/kW]

計算例 -冷温水流量-

計算例①

冷温水流量が50L/minで冷温水往還温度差が7℃の時の冷房能力は24.4kWとなる。

熱量の算出式
(水比熱 x 水密度 x 流量[L/min] x 温度差[℃] x 60[s/h]) / 3,600[(kJ/h)/kW]
4.186 x 1.0 x 50[L/min] x 7[℃] x 60[s/h]) / 3,600[(kJ/h)/kW] = 24.4[kW]

計算例②

冷温水流量が55L/minで冷温水往還温度差が5℃の時の冷房能力は19.2kWとなる。

熱量の算出式
(水比熱 x 水密度 x 流量[L/min] x 温度差[℃] x 60[s/h]) / 3,600[(kJ/h)/kW]
4.186 x 1.0 x 55[L/min] x 5[℃] x 60[s/h]) / 3,600[(kJ/h)/kW] = 19.2[kW]

計算例 -給気風量-

計算例①

給気風量が1,000CMHでエンタルピー差が30kJ/kgの場合は、冷暖房能力は10.0kWとなる。

熱量の算出式
(空気比熱 x 空気密度 x 風量[CMH] x エンタルピー差[kJ/kg]) / 3,600[(kJ/h)/kW]
1.0 x 1.2 x 1,000[CMH] x 30.0[kJ/kg] / 3,600[(kJ/h)/kW] = 10.0kW

計算例②

給気風量が4,000CMHでエンタルピー差が34kJ/kgの場合は、冷暖房能力は45.3kWとなる。

熱量の算出式
(空気比熱 x 空気密度 x 風量[CMH] x エンタルピー差[kJ/kg]) / 3,600[(kJ/h)/kW]
1.0 x 1.2 x 4,000[CMH] x 34.0[kJ/kg] / 3,600[(kJ/h)/kW] = 45.3kW

余談:平均的な空調機の処理熱量を確認する場合

建物の分析等で1台の空調機がどのような運転を行い、どの程度の処理熱量で推移しているかを確認する際にも、前項までで紹介した計算式を使用する場合がある。
つまり、給気風量から求めるか、冷温水流量から計算するかのどちらかを選択することになる。

どちらかを選択可能な場合においては、基本的には冷温水流量から求める方が確実だ。
理由としては、冷温水流量は積算された値をある一定時間ごとに取得することができるためだ。
量水器と似たイメージで、通過した流量を積み上げ、集中監視装置もしくは中央監視設備からデータを取得することができる。

一方で給気風量はある一定のタイミングの瞬間の値しか記録することができない。
(なお、厳密には面風速が計測が可能であり、給気風量は面風速と断面積により演算される)

そのため、分析を行う場合においては冷温水流量から熱量を求めた方がより信頼性が高いデータとなるだろう。

まとめ

今回は、空調機の冷温水流量から空調機の冷暖房能力を算出する方法を紹介した。
現場の実態に即していつでも対応が可能なように、様々な計算方法を身につけていただければと思う。

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