【空調機】吹出温度から必要風量を求める2つ(4つ)の方法を紹介 2024.03.31 こんにちは。空調機の必要風量を求める際に、吹出温度差を用いて計算することが一般的だが、実は2種類の計算方法がある。普段実務で使用するうえでは1種類の方法だけでも、業務に特段の支障はない。しかし、せっかく設備設計を行っているのであれば、様々な方法で必要風量を計算できておいてもよいだろう。今回は空調機の必要風量を求める二つの計算方法を紹介する。 コンテンツ 空調機の必要風量が処理する負荷の対象空調機の必要風量の計算方法全熱負荷と比エンタルピー差から求める方法顕熱負荷と温度差から求める方法(おまけ)潜熱負荷からも必要風量を計算可能計算例計算例①計算例①-1 全熱負荷と比エンタルピー差より求める方法計算例①-2 顕熱負荷と温度差より求める方法計算例①-3 顕熱負荷とエンタルピー差(顕熱分)より求める方法計算例①-4 潜熱負荷とエンタルピー差(潜熱分)より求める方法計算例②計算例②-1 全熱負荷と比エンタルピー差より求める方法計算例②-2 顕熱負荷と温度差より求める方法計算例②-3 顕熱負荷とエンタルピー差(顕熱分)より求める方法計算例②-4 潜熱負荷とエンタルピー差(潜熱分)より求める方法まとめ 空調機の必要風量が処理する負荷の対象 空調機を計画する際は多くの場合は左図に示す空調方式であることが多い。(似た空調方式としてFCU併用方式もある。) その際の空気の冷却プロセスは左図の通りとなる。つまり、空調機内の冷却コイルによって、外気負荷と室内負荷の両方を処理している。一方で、室内へ供給された空気は外気負荷処理後の空気であるため、室内負荷を処理するための空気となる。 室内負荷 顕熱負荷 潜熱負荷 室内負荷は大きく顕熱負荷と潜熱負荷に大別される。空調機の供給空気は上記の負荷いずれも処理をすることとなる。 空調機の必要風量の計算方法 空調機の必要風量計算方法①全熱負荷と比エンタルピー差から求める方法②顕熱負荷と温度差から求める方法 空調機の必要風量の計算方法は全熱負荷と比エンタルピー差から求める方法と、顕熱負荷と温度差から求める方法の二種類がある。なお、いずれの方法においても空調機の必要風量は変わらない。 全熱負荷と比エンタルピー差から求める方法 全熱負荷と比エンタルピー差から必要風量を求めることが可能だ。全熱負荷を用いる場合は潜熱も処理することとなるため、エンタルピー差による計算が必須となる。 計算式 必要風量[CMH] = (全熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg]) 顕熱負荷と温度差から求める方法 顕熱負荷と温度差から必要風量を求めることもできる。潜熱負荷を含まないため、計算式に使用する温度差と比エンタルピー差は実は同じ値となる。例えば、温度差が15℃であれば、エンタルピー差も15kJ/kgとなる。 計算式 必要風量[CMH] = (顕熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x 温度差[℃]) ※温度差[℃]はエンタルピー差[kJ/kg]と置き換えても計算可能 (おまけ)潜熱負荷からも必要風量を計算可能 潜熱負荷を使用しても必要風量を計算可能だ。但し潜熱負荷が発生しない室(電気室等)では、計算ができないため注意が必要だ。 計算式必要風量[CMH] = (潜熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg]) 計算例 実際に以下の4種類の方法で空調機の必要風量を求める。 空調機の必要風量計算方法1全熱負荷と比エンタルピー差から求める方法2顕熱負荷と温度差から求める方法3顕熱負荷とエンタルピー差から求める方法4潜熱負荷とエンタルピー差から求める方法 計算例① 計算例①-1 全熱負荷と比エンタルピー差より求める方法 計算式必要風量[CMH] = (全熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])= (10[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 14.9[kJ/kg])≒2,100[CMH] 計算例①-2 顕熱負荷と温度差より求める方法 計算式必要風量[CMH] = (顕熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x 温度差[℃])= (8[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 11.92[℃])≒2,100[CMH] 計算例①-3 顕熱負荷とエンタルピー差(顕熱分)より求める方法 計算式必要風量[CMH] = (顕熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])= (8[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 11.92[kJ/kg])≒2,100[CMH] 計算例①-4 潜熱負荷とエンタルピー差(潜熱分)より求める方法 計算式必要風量[CMH] = (潜熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])= (2[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 2.98[kJ/kg])≒2,100[CMH] 計算例② 計算例②-1 全熱負荷と比エンタルピー差より求める方法 計算式必要風量[CMH] = (全熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])= (10[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 11.9[kJ/kg])≒2,600[CMH] 計算例②-2 顕熱負荷と温度差より求める方法 計算式必要風量[CMH] = (顕熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x 温度差[℃])= (9[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 10.71[℃])≒2,600[CMH] 計算例②-3 顕熱負荷とエンタルピー差(顕熱分)より求める方法 計算式必要風量[CMH] = (顕熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])= (9[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 10.71[kJ/kg])≒2,600[CMH] 計算例②-4 潜熱負荷とエンタルピー差(潜熱分)より求める方法 計算式必要風量[CMH] = (潜熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])= (1[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 1.19[kJ/kg])≒2,600[CMH] まとめ 今回は空調機の必要風量を求める二つの計算方法を紹介した。実際に様々な方法で空調機の必要風量を求められるようになると、さらに空気線図の使い勝手がよくなることに気づくはずだ。他にも様々な空気線図の使用方法があるため、磨きをかけていただければと思う。
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