【空調機】吹出温度から必要風量を求める2つ(4つ)の方法を紹介

こんにちは。

空調機の必要風量を求める際に、吹出温度差を用いて計算することが一般的だが、実は2種類の計算方法がある。
普段実務で使用するうえでは1種類の方法だけでも、業務に特段の支障はない。
しかし、せっかく設備設計を行っているのであれば、様々な方法で必要風量を計算できておいてもよいだろう。

今回は空調機の必要風量を求める二つの計算方法を紹介する。

空調機を計画する際は多くの場合は左図に示す空調方式であることが多い。
(似た空調方式としてFCU併用方式もある。)

その際の空気の冷却プロセスは左図の通りとなる。
つまり、空調機内の冷却コイルによって、外気負荷と室内負荷の両方を処理している。
一方で、室内へ供給された空気は外気負荷処理後の空気であるため、室内負荷を処理するための空気となる。

室内負荷顕熱負荷
潜熱負荷

室内負荷は大きく顕熱負荷と潜熱負荷に大別される。
空調機の供給空気は上記の負荷いずれも処理をすることとなる。

空調機の必要風量の計算方法

空調機の必要風量計算方法
全熱負荷と比エンタルピー差から求める方法
顕熱負荷と温度差から求める方法

空調機の必要風量の計算方法は全熱負荷と比エンタルピー差から求める方法と、顕熱負荷と温度差から求める方法の二種類がある。
なお、いずれの方法においても空調機の必要風量は変わらない。

全熱負荷と比エンタルピー差から求める方法

全熱負荷と比エンタルピー差から必要風量を求めることが可能だ。
全熱負荷を用いる場合は潜熱も処理することとなるため、エンタルピー差による計算が必須となる。

計算式
必要風量[CMH] = (全熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])

顕熱負荷と温度差から求める方法

顕熱負荷と温度差から必要風量を求めることもできる。
潜熱負荷を含まないため、計算式に使用する温度差と比エンタルピー差は実は同じ値となる。
例えば、温度差が15℃であれば、エンタルピー差も15kJ/kgとなる。

計算式
必要風量[CMH] = (顕熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x 温度差[℃])
※温度差[℃]はエンタルピー差[kJ/kg]と置き換えても計算可能

(おまけ)潜熱負荷からも必要風量を計算可能

潜熱負荷を使用しても必要風量を計算可能だ。
但し潜熱負荷が発生しない室(電気室等)では、計算ができないため注意が必要だ。

計算式
必要風量[CMH] = (潜熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])

計算例

実際に以下の4種類の方法で空調機の必要風量を求める。

空調機の必要風量計算方法
全熱負荷と比エンタルピー差から求める方法
顕熱負荷と温度差から求める方法
顕熱負荷とエンタルピー差から求める方法
潜熱負荷とエンタルピー差から求める方法

計算例①

計算例①-1 全熱負荷と比エンタルピー差より求める方法

計算式
必要風量[CMH] = (全熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])
= (10[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 14.9[kJ/kg])
≒2,100[CMH]

計算例①-2 顕熱負荷と温度差より求める方法

計算式
必要風量[CMH] = (顕熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x 温度差[℃])
= (8[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 11.92[℃])
≒2,100[CMH]

計算例①-3 顕熱負荷とエンタルピー差(顕熱分)より求める方法

計算式
必要風量[CMH] = (顕熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])
= (8[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 11.92[kJ/kg])
≒2,100[CMH]

計算例①-4 潜熱負荷とエンタルピー差(潜熱分)より求める方法

計算式
必要風量[CMH] = (潜熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])
= (2[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 2.98[kJ/kg])
≒2,100[CMH]

計算例②

計算例②-1 全熱負荷と比エンタルピー差より求める方法

計算式
必要風量[CMH] = (全熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])
= (10[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 11.9[kJ/kg])
≒2,600[CMH]

計算例②-2 顕熱負荷と温度差より求める方法

計算式
必要風量[CMH] = (顕熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x 温度差[℃])
= (9[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 10.71[℃])
≒2,600[CMH]

計算例②-3 顕熱負荷とエンタルピー差(顕熱分)より求める方法

計算式
必要風量[CMH] = (顕熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])
= (9[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 10.71[kJ/kg])
≒2,600[CMH]

計算例②-4 潜熱負荷とエンタルピー差(潜熱分)より求める方法

計算式
必要風量[CMH] = (潜熱負荷[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (空気密度[kg/m3] x エンタルピー差[kJ/kg])
= (1[kW] x 3,600[(kJ・h)/kW]) ÷ (1.2[kg/m3] x 1.19[kJ/kg])
≒2,600[CMH]

まとめ

今回は空調機の必要風量を求める二つの計算方法を紹介した。

実際に様々な方法で空調機の必要風量を求められるようになると、さらに空気線図の使い勝手がよくなることに気づくはずだ。
他にも様々な空気線図の使用方法があるため、磨きをかけていただければと思う。

あきしょー工房公式アプリ メカナビ!

機械設備に関する計算をはじめ、気象データ、表やグラフなどをアプリ内で公開。詳細はこちらよりご確認いただければと思う。

イラストや技術データ、ソフト、電子書籍のダウンロードは?

本ブログで紹介しているイラストや技術データ、電子書籍はすべてこちらで公開している。
興味がある方は是非ご確認頂ければと思う。
閲覧はこちらから!


より深く学びたい方は以下の書籍がおすすめ!



初心者マークとおさらば ダクト図の基本


本サイト経営者が執筆。
各設備の中でもダクト設備は特に覚えることが多い上に奥深いことが特徴だ。
そこで本書ではダクトに関する基礎的な知識を極力わかりやすく紹介。
まずは本書を通じてダクトの基本を身につけて頂ければと思う。
Kindle Unlimitedユーザーであれば無料で購読が可能だ。


購読はこちらから





初心者マークとおさらば 換気計画の基本


本サイト経営者が執筆。
各設備の中でも換気計画は、最も重要な設備の一つであり、基本中の基本である。
そこで本書では換気計画に関する基礎的な知識を極力わかりやすく紹介している。
本書を読めば基本的な換気計画の考え方を習得可能だ。
Kindle Unlimitedユーザーであれば無料で購読が可能だ。


購読はこちらから




初心者マークとおさらば エアコンの基本

本サイト経営者が執筆。
多くの家庭に設置されているエアコン。
近年では外気温度も年々上昇しております桝エアコンのニーズが高まっている。
そこで本書ではエアコンに関する基礎的な知識を極力わかりやすく紹介。
まずは本書を通じてエアコンの基本を身につけて頂ければと思う。
Kindle Unlimitedユーザーであれば無料で購読が可能だ。


購読はこちらから




初心者マークとおさらば 空気線図のよみかた

本サイト経営者が執筆。
参考書といえばどうしても難しい表現で記載されていることが多い。
難しい表現を使った書籍で理解を深めるためにはそれ相応の時間を要する。
本書はそんな難しい表現を極力使用せずに空気線図について紹介している。
今回をきっかけに空気線図を学びたい方にはぴったりだ。
Kindle Unlimitedユーザーであれば無料で購読が可能だ。


購読はこちらから



お悩み相談掲示板を始めました!
建築に関する内容やその他建築だけに関わらず、こちらへご相談ください!

Mechanical System
秋翔設計 -Akisho Architectural & Engineering Consultants-

コメント