はいこんにちは。
設計を行っていると建物のピット部分に排水槽を設けることが多々あるかと思う。
特に地下階がある場合においては排水槽は必須だろう。
(公共下水道との高さが合わないため)
割と様々な建物でよく耳にする排水槽だがそんな排水槽には溜まった排水を強制的に建物外へ排水するために水中ポンプが必要だ。
今回はまず排水槽の役割および排水槽の必要容量の算定方法、水中ポンプの能力の算定方法について紹介する。
まずは排水槽について紹介する。
例えば図示するような建物があった場合排水槽が必要なケースが多い。
というのも地下階がある上に地下階に水廻りがある場合は下水道本管よりも地下階の水廻りの方が低い位置にあることが多いからだ。
排水は通常ポンプを使うことはなく自然流下にて下水道本管まで導く。
どんな時に排水槽が必要か
地下階の水はどうするかというと建物内に排水槽と呼ばれる排水を一時貯留するコンクリートでできた水槽を設ける。
その水槽の中にポンプを設けることで排水槽にたまった水を強制的に下水道本管まで導く。
こういった場合に排水槽が大活躍する。
排水槽が必要な場合というのは実は様々ある。
前項にて紹介した地下階がありかつ地下階に水廻りがある場合。
ちなみに地下階に空調がある場合においても空調機からドレン排水が発生するため何らかの形で下水道本管まで導く必要がある。
続いては研究や実験用途の建物で特殊排水が発生する場合。
研究等で発生した排水をそのまま下水道へ流すことができない場合だ。
多くの場合下水道の排水基準がありそれを守れない場合は排水処理を行う必要がある。
排水処理を行うにしても一旦貯留できる排水槽がないと排水処理設備がうまく働かない。
そのため排水槽が必要な場合がある。
その他少し本題からは外れてしまうが浄化槽だ。
これもいわゆる排水槽の一種で建設地周辺に公共の下水道がない場合などに用いられる。
排水槽の容量選定
建築設備設計基準によれば時間平均流量の2~2.5時間分が排水槽の容量とある。
(最小容量3.0m3)
例えば建物全体の日給水量が20m3で建物運用時間が8時間、建物全体の排水を排水槽へ集めるとすれば排水槽の必要有効容量は
20m3/day ÷ 8h/day x 2h = 5m3となる。
排水ポンプの能力算定
続いて排水ポンプの能力算定について紹介する。
同じく建築設備設計基準によれば排水ポンプの能力は排水槽の有効容量を10分から20分で排水できる能力となる。
例えば前項の例では有効容量が5m3であったので排水ポンプの必要能力は以下の式で求められる。
5m3 x 1,000 L/m3 ÷ 20min = 250L/min
従って上記の例であれば250L/minの能力を持つ排水ポンプが必要となる。
時間平均排水量をどのように求めるか
ここで問題となることが時間平均排水量をどのように求めるかということ。
前項までの例のように建物全体の排水を排水槽へ導く場合であれば給水量≒排水量となるはずなので給水計算を転用可能だ。
但し例えばB1Fのトイレの排水のみを排水槽へ導く場合だ。
この場合にはB1Fのトイレからの排水量を何らかの形で導く必要がある。
例えばオフィスのような建物でB1Fも他の階と同様の基準階であれば給水計算で計算している時間平均給水量を階数分で除することで求められるかもしれない。
もしくは大便器や小便器などの数量を拾って排水槽の容量計算および排水ポンプの計算を行う場合もあるだろう。
ここでは後者の場合の計算方法の一例を紹介する。
条件として排水槽へ導く排水管につながっている衛生器具が以下のとおりであるとする。
・大便器(節水Ⅱ形) x 20個
・小便器(FV) x 10個
・手洗器(自動水栓) x 20個
建築設備設計基準より使用回数あたりの給水量(排水量)と1時間当たりの使用回数について記載があるためその値を用いることとする。
・大便器(節水Ⅱ形) : 6.5L/回 x 9回/h x 20個 = 1,170L/h
・小便器(FV) : 3.0L/回 x 16回/h x 10個 = 480L/h
・手洗器(自動水栓) : 1.0L/回 x 16回/h x 20個 = 320L/h
・合計:1,970L/h
排水槽有効容量は時間平均排水量2時間分とすれば
1,970L/h x 2h = 3,940L
となる。
続いて排水ポンプの能力は排水槽有効容量の20分分とすれば
3,940L ÷ 20min = 197L/min
となる。
まとめ
今回は排水槽の役割および排水槽の必要容量の算定方法、水中ポンプの能力の算定方法について紹介した。
万が一排水槽の容量が極端に小さいもしくは排水ポンプの能力が極端に小さいと排水しきれない可能性もあるため実情を踏まえた容量、能力とすることが重要だろう。
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