最近よく議題に上がることが多いBIM。
そんなBIMを施工段階ではなく設計段階から使用する試みが最近模索されている。
ただ議題に上がる割にはそもそもBIMとはなんぞや。だったりBIMを行うことによるメリットを把握していない方が多いように見受けられる。
施工者サイドはすでにほとんどの企業で使われているが設計サイドでBIMを使用している話はあまり聞いたことがない。
今回はBIMとは何かからBIMの使い道、さらにはBIMは本当に必要なものなのかどうかに焦点をあてて紹介する。
BIMとはbuilding information modelingの略だ。
訳すと建物情報をモデル化するということ。
まだまだよく分かりにくいのでさらに噛み砕く。
日本において最近ではよく施工サイドで使われることが多くなったBIM。
通常施工図と呼ばれる工事を行うための図面を2Dにて作成しそれを職人さんへ伝達することが一般的だった。
ただそれだけだと複雑な部分を施工する場合にどうしても共通のイメージが湧きにくい場合があり間違った施工を行ってしまうことがある。
また施工図を起こす際においても実際に2Dだけで書くことにより問題が露呈し難い。
結果あとから手戻りになったり時には取り返しのつかないことになったりする。
そういったものを払拭するために使われるBIM
BIMの最大の利点は3Dで絵を起こすことができること。
ようするに実際の施工のイメージを書いてる人や伝達される人の間で共有が可能なツールなのだ。
BIMのアルファベットのI=informationとあるようにただただCAD上で線の集合体を作っていくこととは異なり、実際にレゴのようにそれぞれの線に厚みの情報や高さの情報を与えて仮想建物を制作していくイメージになる。
施工段階だけではないBIMの応用
それだけではなく維持管理面などの側面へ対してもBIMを利活用できる。
例えば将来的に間仕切りを変えたい場合。
肝心の材質や色など周囲の壁と完全に合致させないとどうしても違和感が出てしまうことは明白だ。
そういった場合に備え事前にBIMで書かれた壁に対し壁の色や材質情報を入力しておくことで実際にBIMを確認するだけで全く悩む必要もなく壁の更新が可能だ。
また同じく間仕切りを変更する場合の設計においてもBIMのポテンシャルを発揮できる。
BIMのデータそのものをそのまま設計者へ渡すことで既設の情報が3Dで認知できる。
となるとわざわざ現地に行って実測して図面に既設の状態を起こす必要がなくなる。
もしくは既存の古い手書きの図面から起こす必要もない。
維持運用面においても十分に利活用が可能だ。
3Dで作るBIMって入力が大変
確かに今まで2Dで作成していた図面を3Dで入力することにより単純にそこにかかる労力が倍以上になる。
ただ前述した通りで施工段階における手戻りや維持運用面でのメリットを考えると結果的には省力化となる。
またBIMは本当にどんな使い方でも可能なツールなので今後応用含めてさまざまな用途で使われることに期待される。
BIMが流行らない理由
BIMが流行らない理由
日本におけるBIM普及率はまだまだ低い。
要因の一つは日本が契約社会ではないことが起因している。
BIMの発祥はアメリカと呼ばれている。
アメリカは日本とは異なり設計者と施工者間でのやりとりが全くと言っていいほどない。
施工者は施工者で図面通り建物を作らないと施工瑕疵が発生するため図面通りに建物を作る。
すると不整合がある設計図だとその不整合が施工段階でも抽出されずに何かが変な建物が出来上がってしまう。
(ちなみに不整合が存在しない図面は経験上存在しないかと思われる)
その変な建物ができてしまうことを未然に防ぐためにBIMが生まれた背景があるため、アメリカでのBIM普及率が必然的に高くなる。
一方で日本の場合ではどうだろうか。
契約に関わらずできる範囲で設計者と施工者が協力して建物を完成させる。
この協力が発生することで建物がよりよいものになる。
もともとこうした文化が日本にはあるためBIMが設計段階から使われることはほとんどない。
BIMを流行らせるために
これだけのポテンシャルを持っているBIMだがそれを最大限に引き出すためにはまずはBIMの普及率をあげるしかない。
そもそも現状の様々な物件の設計工程でBIMを作成する時間があるのだろうか。
通常設計事務所が業務を受注すると設計業務として基本設計や実施設計がある。
(それぞれにかかる時間は物件の規模や用途により大きく異なる。)
そこにBIMの作業が新たに発生するわけなのでその分設計工程が伸びることが普通だろう。
ただどの業務においてもBIM作成期間が全く見込まれない現実がある。
ただでさえ設計工程に余裕がない中BIMまで行っている時間はそもそも存在しえない。
最初から基本設計と実施設計の間にBIM制作①、実施設計の後に②とその期間を入れるだけでもだいぶBIMの普及率は上がるだろう。
なおBIM制作期間を2回にわけた理由は以下の通りだ。
1回目で建築構造設備間の大きな不整合を解消する。
2回目はBIMを必要な部分まで情報を組み込み仕上げる。
実際にBIMを作業してみるとよくわかるがとてもではないがそれぞれの細かい変化にリアルタイムで追従するなんて現実的ではない。
そのため特に1回目で不整合関係の撲滅を一度ないし何度か行った後にBIMで細部まで作り込んでいく方がよいだろう。
そうすることで結果的にBIMでの作業時間の省力化が図れる上に都度修正などが発生し難いため入力ミスも最小限で済む。
まずはBIMを制作する上でのガイドラインや工程の基準化が必要だ。
その上で実際にBIMを触ることができる人が増えていけば近い将来BIMが浸透することだろう。
まとめ
今回はBIMの基礎的内容からBIMでできること、BIMの将来性について説明した。
長い目で見れば将来的に確実にBIMが主流になることは必然だ。
BIMの有用性を理解していただけたのであればこれを機にBIMについてさらに詳しく理解されることをお勧めする。
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