衛生器具の数量算定方法 ー計算方法を紹介-

こんにちは。

建物の計画を行うときに、水廻りの計画についても合わせて考える必要がある。
その際に建物の利用人数を把握した上で衛生器具の数量を算定し、水廻りの大きさを決定する必要がある。
設計を始めたばかりの方からすれば、一体どのようにして衛生器具の数量を決定したら良いかわからないことだろう。

今回は、衛生器具の数量の計算方法を紹介する。

衛生器具の算定方法は大きく2種類ある。

一つが空気調和衛生工学会(以降:SHASE)で発刊している、衛生器具の適性個数算定表によるものだ。
こちらの書籍では、サービスレベル(どの程度の待ち時間を許容するか)毎に必要な衛生器具の数量が記載されている。

一方で労働安全衛生法では、法的に必要な衛生器具の数量が定められている。

衛生器具の算定方法
SHASE-S 206-2019 給排⽔衛⽣設備規準・同解説(空気調和・衛⽣⼯学会編) 衛生器具の適正個数算定表
労働安全衛生法 事務所衛生基準規則(事務所則)

SHASE 衛生器具の適性個数算定表

サービスレベル

SHASEによる衛生器具の適正個数算定表では、建物建物用途、人員数、サービスレベルによって必要な衛生器具数が記載されている。

サービスレベルは数値が小さいほどグレードが高い。

サービスレベルと解説
サービスレベル1待つことが少ない良好なサービスレベル
サービスレベル2標準的なサービスレベル
サービスレベル3最低限のレベル

サービスレベルと衛生器具の数量の関係性

サービスレベルと衛生器具の数量の関係性は下表の通りだ。

用途器具到着率
[人/分・100人]
占有時間
[s]
待ち時間の尺度
レベル1レベル2レベル3
事務所男子大便器0.130300P(>10)<0.05P(>60)<0.05P(>120)<0.05
男子小便器0.60030P(>0)<0.05P(>10)<0.05P(>30)<0.05
男子洗面器0.70020P(>0)<0.05P(>10)<0.01P(>20)<0.01
女子大便器0.60090P(>10)<0.01P(>40)<0.01P(>90)<0.01
女子洗面器1.00030P(>0)<0.01P(>10)<0.01P(>30)<0.00

出典:SHASE-S 206-2019 給排⽔衛⽣設備規準・同解説(空気調和・衛⽣⼯学会編)
衛生器具の適正個数算定表

用途

用途は大きく、「事務所」、「百貨店・量販店」、「寄宿舎」、「劇場」、「学校」、「病院」に大別される。
用途ごとに後述する、到着率や占有時間、待ち時間の評価尺度が設定されている。

到着率

到着率とは、100人あたりかつ1分あたりに該当する衛生器具に到着する人数を示す。
単位は 人/分 x 100 となる。
例えば事務所用途で男子大便器であれば、100人あたりかつ1分あたり、0.13人が男子大便器を利用することとなる。

占有時間

占有時間は衛生器具1回の利用にかかる時間を示す。
単位は秒で示される。

待ち時間の尺度

待ち時間の尺度は待ち時間とその待ち時間が発生する確率で示される。
例えば、事務所用途かつ男子大便器、サービスレベル1の場合は、10秒以上待つ確率が5%以下であることを示す。

用途別、サービスレベル別、衛生器具の数量

以下にSHASEに基づき、LIXILのカタログで紹介されている、建物用途別かつ衛生器具別、サービスレベル別の利用人員と器具数の相関図を紹介する。

事務所

百貨店・量販店

寄宿舎

学校

病院

劇場

労働安全衛生法 事務所衛生基準規則(事務所則)

事務所に限るが、労働安全衛生法では、以下のとおり、各衛生器具の最低数量についての基準がある。
人数は、あくまでも同時に働く、滞在する人員数の最大値で求める必要がある。
人員数に比例して衛生器具の数量が増えることがわかる。
また、男女兼用(多機能便所等)を設けることで、1つにつき、労働者数を10人減じて計算することが可能となる。

衛生器具ごとの必要な数量
男子大便器の数量1個/60人 以上
男子小便器の数量1個/30人 以上
女子大便器の数量1個/20人 以上

まとめ

今回は、衛生器具の数量の計算方法を紹介した。
建物により衛生器具の使われ方が異なることや、最近では、多機能トイレをはじめ、トランスジェンダー対応など様々な形態が存在する。
そのため、あくまでも本指標は参考とし、法を満足した上で、実情に合わせて衛生器具の数量を決定することが大切だ。

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