ベントキャップの圧損はどのくらい? -様々な形状のベントキャップの圧損を紹介-

こんにちは。

ファンや空調機の静圧計算を行う際に、ファンや空調機に接続される各種パーツを拾って、圧損を積み上げる。
一般的にダクトやダンパー類であれば、特段戸惑うことなく静圧計算を行うことが可能であろう。
しかし、ベントキャップの場合は意匠上の都合などにより様々な形状が採用される。
ベントキャップを制作している企業も、そういった都合に合わせて、実際に様々な種類をラインナップしている。
つまり、ベントキャップの種類によって、圧損が変わる可能性がある。

今回はベントキャップの圧損の算出方法を確認した後に、様々な形状のベントキャップの圧損について紹介する。

圧損の計算方法

圧損の計算式

ベントキャップのカタログ等を確認すると、ベントキャップの種類ごとに局部抵抗係数が設定されている。
そのため、局部抵抗係数より圧損を算出することとなる。
圧力損失は、下表の式で算出される。
圧力損失は、風速の2乗に比例する特徴がある。

圧損の計算式
圧力損失[Pa] = 局部抵抗係数 x 風速[m/s]^2 x 空気密度(1.2)[kg/m3] ÷ 2

圧損の計算例

例えば、局部抵抗係数が2で、風速が3m/sの場合を想定する。
局部抵抗係数と風速を下表の計算式に代入すると、計算結果は10.8Paとなる。

圧損の計算例
圧力損失[Pa] = 局部抵抗係数 x 風速[m/s]^2 x 空気密度(1.2)[kg/m3] ÷ 2
圧力損失[Pa] = 2 x 3[m/s]^2 x 1.2[kg/m3] ÷ 2
圧力損失[Pa] = 10.8[Pa]

ベントキャップの種類と圧損

ベントキャップの種類

今回はメルコエアテック(2024年度版)に記載されているベントキャップを対象とした。
アパートやマンションで見かけることが多いベントキャップやその他、様々な商業施設でも見かけることが多いベントキャップのうち下表に示す5種類とした。
次項の計算で各ベントキャップの局部抵抗係数を使用するため、各ベントキャップにA〜Eと凡例を設けた。

圧損の計算式
種類 A B C D E
局部 抵抗 係数 給気 100Φ 1.31 2.09 2.03 2.43 3.88
150Φ 1.19 2.87 2.27 3.36 6.24
200Φ 1.52 3.76 4.21 3.42 6.46
250Φ 1.90 4.50 3.97 4.71 4.27
300Φ 9.22 6.25 6.09 8.07
排気 100Φ 1.47 1.94 2.85 1.80 3.38
150Φ 1.26 2.27 2.78 2.26 4.26
200Φ 1.52 2.71 3.71 2.28 4.05
250Φ 1.90 3.39 3.98 3.52 4.66
300Φ 7.60 6.42 4.31 8.07

圧損の計算条件

前項で紹介した、ベントキャップの局部抵抗係数を実際に計算した。(下表)
局部抵抗係数が給気と排気で大きく異なることもあり、給排気での圧損も異なる結果となった。
また、風量やダクト径、ベントキャップのサイズ等によって、圧損が大きく変わることが確認された。

系統名給気
排気
風量ダクトベントキャップ面風速圧損
断面積種類大きさ局部抵抗係数
[-][-][m3/h][Φ][m2][-][Φ][-][m/s][Pa]
FS-1給気300200Φ0.03142A200Φ1.522.6536.42
FS-2給気400200Φ0.03142B200Φ3.763.53728.23
FS-3給気500250Φ0.04909C250Φ3.972.83019.08
FS-4給気600250Φ0.04909D250Φ4.713.39632.60
FS-5給気700250Φ0.04909E250Φ4.273.96140.20
FE-1排気100150Φ0.01767A150Φ1.261.5731.88
FE-2排気300200Φ0.03142B200Φ2.712.65311.45
FE-3排気500250Φ0.04909C250Φ3.982.83019.13
FE-4排気700250Φ0.04909D250Φ3.523.96133.14
FE-5排気900300Φ0.07069E300Φ8.073.53760.58

ベントキャップ圧損計算書

蒸気で紹介したベントキャップの圧損計算書をこちらで公開しているため、興味がある方はご利用いただければと思う。

まとめ

今回は、ベントキャップの圧損の算出方法を確認した後に、様々な形状のベントキャップの圧損について紹介した。
実際の設計業務ではベントキャップ1個に対し20Paや30Paなどの圧損を設定する事が多い。
しかし、実際には条件によって圧損が大きく異なるため注意が必要である。

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