ドレンの排水先 -下水道法上の解釈や放流先の実情について紹介-

こんにちは。

普段設計を行う際に空調ドレンの扱いがよくわからないことが多い。
特段誰からも指摘されることがないため、何となく設計していることが実情だろう。
しかし、地方自治体等の解釈によってはドレンの排水先を明確に規定していることもある。

今回はドレンの排水先の関係法令や実情について紹介する。

ドレンとは

ドレンとは、冷却時の過程によって発生する凝縮水を示す。
例えば35℃50%の外気を15℃90%まで冷却すると結露が発生する。
これを凝縮水(ドレン)と呼ぶ。

雨が降る仕組み

雨が降る仕組みも、ドレンが発生する仕組みと同じだ。
水蒸気を含む空気が上昇し、上空で冷却される。
空気が冷却されると結露し水蒸気となり、雲を形成する。
そして雲により雨が発生する。

ドレン排水の種類

ドレン排水は大きく2種類に大別することができる。
1つが前項で紹介した、空気を冷却することにより発生するドレンだ。
もう1つが燃焼空気が発生する際に発生するドレンだ。

ドレン排水の種類
冷却時に発生するドレン燃焼時に発生するドレン

冷却時に発生するドレン - 室外機と室内機におけるドレン -

室外機と室内機におけるドレン発生のメカニズムについて下図に紹介する。
図中左側が室外機で、図中右側が室内機だ。
室外機と室内機は冷媒管によって接続されている。

冷房運転時は、室外機側の熱交換器によって冷媒を冷却する。
冷却された冷媒が室内機側の室内空気と熱交換されることで室内空気を冷却する。
つまり、冷房時においては、空気が冷やされる室内機側にドレンが発生する。

暖房運転時は冷房運転時と真逆のプロセスとなり、外気が冷却される。
冬期に外気が冷却されると霜が発生する。
その霜取り運転時に、霜が水や水蒸気となり室外機側にドレンが発生する。

燃焼時に発生するドレン - ガスヒートポンプ(GHP)等のドレン排水 -

ガスヒートポンプ(以降:GHP)のドレン排水は前項で紹介した、熱交換器によるドレン排水以外に、燃焼空気によるドレン排水も発生する。
空気を燃焼することによってもドレン排水(排気水や排気ドレンと呼ばれる)が発生する。
このドレン排水は、酸性でありかつ油分も含んでいる。
屋上がアスファルト防水の場合は、GHPからの油分でアスファルト防水が溶けてしまうことも考えられる。
理由としては、アスファルト防水も油を原材料としているため、お互いが簡単に混ざり合ってしまうためだ。

燃焼起因のドレン排水は通常、機器本体の内部の排気水濾過装置(ドレンボックスとも呼ぶ)内のアルカリ性の充填石により、中和処理を行った後に排水される。
また、ドレン排水内に含まれている油分は、排気水濾過装置内のドレンフィルターによって取り除かれる。

ドレンの排水先

下水道法第2条

下水道法第2条の条文を以下に抜粋した。

下水道法第2条の1
(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 下水 生活若しくは事業(耕作の事業を除く。)に起因し、若しくは付随する廃水(以下「汚水」という。)又は雨水をいう。

下水道法によれば、「生活もしくは事業に起因し、もしくは付随する廃水」にドレン排水が該当するかどうかが、一つの判断基準となる。
実際に上記法文を根拠に、ドレン排水は雑排水と扱う地方自治体も一定数存在する。
(逆にドレン排水について明確な規定を定めていない地方自治体も存在する。)
ドレン排水は常に雨水と同一の水質とは限らないというところが主張だ。
例えば、メンテナンスによる洗浄水等がドレン管内を通る可能性がある。

潜熱回収型ガス給湯器等ドレン排水の取扱いについて

2012年には、「潜熱回収型ガス給湯器等ドレン排水の取扱いについて」として、国土交通省が、ドレン排水の取り扱いについて発表している。
潜熱回収型ガス給湯器については、雨水と同様の取り扱いとしてもよい旨が記載されている。
(雨水と取り扱ってもよいと判断可能との記載なので、本文を受け各地方自治体が最終的に判断することとなる。)
以下に内容の抜粋を紹介する。

潜熱回収型ガス給湯器等ドレン排水の取扱いについて
ドレン排水については生活に起因する排水であることから、下水道法第 2 条により「汚水」に分類され、汚水系統の排水設備に排出する取り扱いになると認識される。しかし、潜熱回収型ガス給湯器の普及は地球温暖化対策に寄与すること、「2.潜熱回収型ガス給湯器とドレン排水の性状」に示すとおり、ドレン排水は燃焼由来であり、排出量が微量であること及び水質を一定に保つ機構を有し、その性能が担保されることが確認されていることから、各自治体が公共下水道の整備状況(分・合流式等整備手法を含む)及び地域の公共用水域への影響等を勘案しつつ、ドレン排水を“雨水と同様の取扱い”とし必ずしも汚水系統の排水設備へ排出する必要がないと取り扱う判断可能である。

ドレン排水の取り扱い -東京都下水道局-

「潜熱回収型ガス給湯器等ドレン排水の取扱いについて」を受け、東京都下水道局ではドレン排水の取り扱いを以下の通りとしている。

ドレン排水の取扱いについて
ドレン排水は、「生活・事業に起因する廃水」であり、下水道法第2条における「汚水」にあたるため、汚水系統への排出を原則とします。
ただし、以下の要件をすべて満たしたものは、例外として雨水系統への排出を認めます。
1.設置する潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)及び家庭用燃料電池システム(エネファーム)が、一般財団法人 日本ガス機器検査協会(JIA)の認証機器であること。ただし、家庭用燃料電池システム(エネファーム)については、「JIAドレン検査基準対応品」の表示があること。
2.近隣周辺の生活環境に悪影響を及ぼすことがないような施工。
3.汚水系統の排水設備への排出が建物等の構造上極めて困難な場合。

室外機のドレン放流先の実情

各家庭の室外機を確認頂いてもわかるかと思うが、多くの場合において、ドレン排水はそのまま放流されていることが多い。
屋上設置の室外機の場合は、せいぜい雨水を集水する竪樋の直上まで横引き配管を行う程度だろう。

左図のような室外機配置であれば、外壁を貫通して、建物内の他のドレン排水へ接続することが可能だろう。
しかし、多くの場合は、屋上基礎上部に室外機を設置することとなる。
つまり、室外機用の基礎をある程度かさまししないと、排水勾配の確保が難しい。
(建物外壁部の防水立ち上がりを貫通しない高さで外壁貫通する必要があるため)
正しく設計を行うためには、各地方自治体との協議を行い方向性を決めることが大切だ。

寒冷地は注意が必要

室外機の性質上、冬期に霜取り運転ドレンが発生する。
寒冷地の場合は、排水で床が凍り付くため、必要に応じて床にヒーターを設置するか、確実にドレン配管を雨水もしくは雑排水として処理するなどの配慮をすることが望ましい。

まとめ

今回はドレンの排水先の関係法令や実情について紹介した。
実際には、各地方自治体(水道局や下水道局等)へ確認の上、ドレン排水を雨水と扱うか、雑排水と扱うかを決定するとよいだろう。

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