【設計外気温湿度の算定方法】冬期かつ夜間に空調を行う場合 2023.12.04 こんにちは。普段設計を行う際の設計外気温度は建築設備設計基準で決めることが多い。建築設備設計基準では全国各地の夏期設計外気温湿度が9時、12時、14時、16時と時間別に記されている。一方で冬期設計外気温湿度は午前9時の値しか記載がされていない。つまり冬期で夜間に空調を行うことは考えられていないことを意味する。今回は冬期かつ夜間に空調を行う場合の設計外気温湿度の算定方法を紹介する。 コンテンツ 冬期の外気温度冬期夜間設計外気温湿度の算定方法ステップ①、② 気象庁より設計を行う地域のcsvを取得ステップ③ 時刻別比エンタルピーの算出ステップ④ 比エンタルピーを昇順で並び替えステップ⑤、⑥ 危険率2.5%となるときの比エンタルピーを確認まとめ 冬期の外気温度 上図に東京における2022年度12月-3月の月別時刻別平均外気温度を示す。気象庁のcsvよりデータは引用した。横軸に時刻、縦軸に月別平均外気温度を示す。図中、月ごとに色で分けた。建築設備設計基準における冬期の設計外気温湿度の設定時刻は9時だ。一方でどの月においても6時もしくは7時が最低外気温となる時刻であることがわかる。また0時から8時と9時の外気温度に着目するといずれの月も0時から8時の外気温度の方が9時よりも低いことがわかる。つまり冬期かつ夜間にも空調を行う場合は建築設備設計基準に記されている外気温湿度よりもより条件の悪い外気温湿度を使用するべき必要がある。 冬期夜間設計外気温湿度の算定方法 冬期夜間設計外気温湿度の算定フローを下表に示す。主には気象庁で公開されている気象データ(csv)より外気温湿度を取得し、危険率2.5%となる外気温湿度を算定する流れとなる。 冬期夜間設計外気温湿度の算定フローステップ①気象庁より設計を行う地域のcsvを取得ステップ②2010年から2019年の12月から3月の外気温度および外気相対湿度のcsvを取得(1時間データ)ステップ③時刻別比エンタルピーの算出ステップ④比エンタルピーを昇順で並び替えステップ⑤危険率2.5%となるときの比エンタルピーを確認ステップ⑥危険率2.5%となるときの外気温度、外気相対湿度を確認 ステップ①、② 気象庁より設計を行う地域のcsvを取得 以下の気象庁のHPへアクセスし必要な外気温度および外気相対湿度のデータを取得する。リンクを確認頂くと様々な地域のデータを取得可能であることがわかるはずだ。だがごくたまに選択可能な地域でも外気温度や外気相対湿度が取得できない可能性がある。そういった場合は計画地近隣の市町村を選択しよう。データの種類は時刻別を選択。期間は12月~3月を選択し、2010年-2019年を1年ごとに取得しよう。(時刻別の場合1度に1年以上のデータを取得できない。)なお本稿で紹介する外気温湿度は東京の2022年度12月-3月までのデータのみ使用している。そのため実際に東京の冬期夜間設計外気温湿度を使用する際は注意されたい。 気象庁|過去の気象データ・ダウンロード気象庁が提供するページです ステップ③ 時刻別比エンタルピーの算出 次に時刻別の比エンタルピーの算出を行う。各時刻の温度および相対湿度があれば求められるはずだ。以下に紹介するエクセルでは飽和水蒸気、水蒸気分圧、絶対湿度を求めたのちに比エンタルピーを算出している。 ステップ④ 比エンタルピーを昇順で並び替え まずは先ほど求めた比エンタルピーや時刻外気温湿度までを他のページにコピーペーストする。コピーペーストする際には必ず「形式を選択して貼り付け」-「値」にしてから貼り付けを行おう。なお日付については値で張り付けると表示形式が日付でなくなってしまう。そのため日付だけは「形式を選択して貼り付け」-「すべて」を選択して貼り付けを行おう。 次に比エンタルピを基準に各種データを昇順で並び替える。下図に示す通りに比エンタルピの値が小さい順番で並び替える。 ステップ⑤、⑥ 危険率2.5%となるときの比エンタルピーを確認 データを昇順に並び替えたら次はデータの個数を整理する。2022年度の場合はデータ個数は合計で2,904個だ。実際にデータを集計する際は2010年から2019年の10年間のデータを扱うことになるため29,040個程度のデータが存在するはずだ。(うるう年により若干データ個数が異なる)危険率は通称TACとも呼ばれ、建築設備設計基準に記載されている外気温湿度はこの危険率が既に加味された温湿度が記されている。危険率2.5%とは2.5%の可能性を除き基本的には設計外気温湿度に納まるといった意味だ。(つまり2.5%は設計外気温湿度よりも悪い条件となる)つまり集計したうちの比エンタルピ上位2.5%を除外した時の最も不利側の外気温湿度が設計外気温湿度となる。2022年度のみを対象とするとデータ個数は2,904個だ。つまり2,904個の2.5%は72.6個となる。つまり73個目のデータが採用する設計外気温湿度となる。下表の例はあくまでも東京における2022年度12月~3月の外気温湿度のみを対象とし集計した。そのため実際に2010年~2019年で集計を行うと更に不利側の外気温湿度を設定することとなるだろう。 冬期夜間設計外気温湿度 温度 相対湿度 比エンタルピー 0.7℃ 53.0% 6.0kJ/kg まとめ 今回は冬期かつ夜間に空調を行う場合の設計外気温湿度の算定方法を紹介した。実際に空調を使用する際の外気温湿度を踏まえて計算を行わないと意図した空調効果が得られない可能性がある。そのため利用者側とのヒアリングを踏まえ適切な外気温湿度を設定するようにされたい。 本稿で紹介したエクセルデータはこちらからダウンロード可能なため興味がある方はアクセスいただければと思う。
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