【設備設計者必見】A工事(甲工事)、B工事(乙工事)、C工事(丙工事)とは -工事区分の意味から考え方を紹介-

こんにちは。

店舗を含んだ施設の設計を行っていると工事区分の整理をすることがある。
具体的にはA工事(甲工事)、B工事(乙工事)、C工事(丙工事)をそれぞれ整理した上で貸方基準を作成する必要がある。
貸方基準とは各工事区分をまとめた書類のことだ。
この書類に基づいてテナント側は店舗を借りる際の条件やどんな工事がテナント側で必要かを把握する。

建物のオーナーが他に所有している建物で既に貸方基準を作成していればその貸方基準に従うことも一つだ。
だが店舗を含んだ施設を初めて計画する場合はどうしても工事区分について整理を行う必要がある。

今回は各種工事区分の意味から特徴を紹介する。

A工事(甲工事)、B工事(乙工事)、C工事(丙工事)とは

まずはA工事、B工事、C工事の各工事概要について紹介する。

項目説明
A工事建物側であらかじめ準備しておく工事
B工事テナント側都合で変更する工事
C工事テナント側都合で変更する工事

A工事は建物側で最小限準備しておく工事を示す。
左図にA工事の例を示す。
例えば飲食を行う店舗をあらかじめ誘致することが決まっている場合は給水管および排水管を床上につきだしておく。
テナント側で自前で給排水を用意することは非常に困難なためだ。

左図にC工事の例を示す。
前図のA工事以降の配管がC工事の対応範囲となる。
C工事はテナント側で一式資材の準備ならびに工事を行う必要がある。

工事区分毎の工事区分、責任区分を以下に紹介する。

項目A工事B工事C工事
発注ビルオーナーテナントテナント
業者指定ビルオーナーが指定ビルオーナーが指定テナントが指定
費用ビルオーナーが支払いテナントが支払いテナントが支払い

①発注

発注についてはA工事はビルオーナーが行う。
一方でB工事およびC工事については通常テナント側で発注を行う。

②業者指定

A工事およびB工事についてはビルオーナーが業者を指定する。
一方でC工事についてはテナント側で自由に業者を選定してよい。

B工事区分についてはビルオーナー側で業者を指定できる部分が大きな特徴だろう。
特に本体側に大きく影響する工事についてはC工事ではなくB工事とすることが多い。

③費用

A工事についてはビルオーナーが費用を支払う。
一方でB工事、C工事についてはテナント側で自由に業者を選定してよい。
B工事、C工事はテナント都合による工事だからだ。

前項よりC工事であればテナント側の裁量で工事を依頼する業者を決めることができる。
そのため費用を比較的コントロールしやすい。
一方でB工事の場合はビルオーナー指定の業者を使用し工事を行う。
つまり費用のコントロールをほとんど行うことができないことが特徴だ。

B工事、C工事の工事区分の整理の仕方

A工事では必要最小限の設備を準備すればよい。
そのためA工事とする範囲については比較的迷うことはないかと思う。
だがB工事およびC工事の場合は業者を指定するかどうかだけの違いだ。
そのためいまいちB工事とC工事をどのように分けたらよいかわからない方も多いだろう。

例えば消火設備は以下のような工事区分とすることが多い。

工事区分消火設備
A工事スケルトンの状態での必要な消火設備の設置
B工事間仕切り追加等による変更対応
C工事なし

消火設備は建物全体で一つのシステムだ。
また通常甲工事においても専門工事(消火メーカーの責任施工による工事)で行うことがほとんどだ。
そのためどこの誰かもわからない業者に消火設備を触らせるわけにはいかない。
それで何か問題が起こったときに責任の所在が不明確となってしまう。
つまりC工事を認めないことにつながる。

他にも空調機器や換気機器についても専門工事(自動制御設備)が絡む場合はC工事ではなくB工事とすることが普通だろう。

つまりC工事とする場合は建物本体への影響が一切ない場合となる。

なお給排水も捉え方によっては建物全体で1つのシステムとも考えられる。
だが先に紹介した専門工事へ影響しない工事種目についてはC工事とする場合が多い。

まとめ

今回は各種工事区分の意味から特徴を紹介した。
工事区分はビルオーナーの考え方によっても大きく変わることがある。
そのため正解が一つではない。
各工事区分の主旨を理解しておけば、どのような工事区分であったとしても戸惑うことなく対応可能だろう。

コメント