こんにちは。
比較的小規模な建物に空調設備を導入する場合は、業務用のパッケージエアコンを導入するケースが多い。
しかし、業務用のパッケージエアコンは一体家庭用のルームエアコンと何が異なるのだろうかとふと疑問に思われる方も少なくない。
業務用パッケージエアコンのほうが、一般的に使用可能な範囲が多い。
それゆえに、非住宅建物の場合は業務用パッケージエアコンが一般的に採用される。
今回は、家庭用ルームエアコンと業務用パッケージエアコンの違いを紹介する。
家庭用ルームエアコンと業務用パッケージエアコンの違いについて下表に一覧で紹介する。
大きく9項目について、家庭用エアコンと業務用エアコンの比較を行った。
次項以降に項目別に特徴を紹介する。
項目 | 家庭用エアコン | 業務用エアコン |
---|---|---|
能力 | 2.2kW-5.6kW | 3.6kW-25.0kW |
室内機の種類 | 少ない | 多い |
電源の種類 | 1Φ100V、1Φ200V | 1Φ200V、3Φ200V |
電源供給先 | 室内機もしくは室外機 | 室外機 |
電気代 | 後述 | 後述 |
運転効率 | 後述 | 後述 |
最大冷媒管長 | 10-20m | 50-100m |
最大冷媒管高低差 | 15-20m | 30m |
法定耐用年数 | 6年 | 13-15年 |
※メーカーにより性能が若干異なる。
能力
家庭用エアコンと業務用エアコンについて冷房能力をベースに比較を行った。
家庭用エアコンは2.2kW等小さな能力を持ったエアコンが用意されているが、最大で5.6kW程度までしか製品が提供されていない。
一方で、業務用エアコンは2.2kW等の小さな能力を持ったエアコンはないものの最大で25kWまでのエアコンが用意されていることが大きな特徴の一つである。
冷房能力[kW] | 家庭用エアコン | 業務用エアコン |
---|---|---|
2.2 | ○ | – |
2.5 | ○ | – |
2.8 | ○ | – |
3.6 | – | ○ |
4.0 | ○ | ○ |
4.5 | ○ | ○ |
5.0 | ○ | ○ |
5.6 | ○ | ○ |
6.3 | – | ○ |
7.1 | – | ○ |
8.0 | – | – |
10.0 | – | ○ |
12.5 | – | ○ |
14.0 | – | ○ |
20.0 | – | ○ |
25.0 | – | ○ |
※メーカーによりラインナップが若干異なる。
室内機の種類
室内機の種類についても家庭用エアコンと業務用エアコンでは種類が大きく異なる。
家庭用エアコンは、主に壁掛形やカセット形、床置形の3種類が主に用意されている。
一方で、業務用エアコンは、家庭用エアコンの室内機の種類に加えて、天井埋込ダクト形や天井吊形、厨房用といった種類が用意されている。
室内機の種類 | 家庭用エアコン | 業務用エアコン |
---|---|---|
壁掛形 | ○ | ○ |
天井埋込カセット形 | ○ | ○ |
ビルトイン形 | – | ○ |
天井埋込ダクト形 | – | ○ |
天井吊形 | – | ○ |
床置形 | ○ | ○ |
厨房用 | – | ○ |
※メーカーによりラインナップが若干異なる。
電源の種類、電源の供給先
電源の種類
電源の種類について、家庭用エアコンは主に1Φ100Vが用いられることが多い。
エアコンの能力が大きくなると1Φ200Vが用いられることもある。
業務用エアコンは一般的に1Φ200Vもしくは3Φ200Vが用いられる。
(エアコンの能力に応じて1Φ100V → 1Φ200V → 3Φ200Vとなることが多い。)
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1Φ100Vで大きな電力を扱うことができない理由
電力会社の供給仕様やコンセントの許容電流を考慮して、一般的に1回路に対し20Aまでしか利用できない。
実際にはコンセントの最大許容電力は100V × 15A = 1500Wであるため、1,500Wが上限値となる。
つまり、1Φ100Vの場合は最大で1,500Wまで利用が可能となる。
また、1Φ200Vの場合は、200V x 20A = 4,000Wまでとなる。
さらに4,000Wを超える場合は3Φ200Vによる電源供給が必要となる。
電源の供給先
家庭用エアコンの場合は、室内機に電源を供給することが一般的である。
(家庭のエアコンを確認いただくと、コンセントから室内機に電源が供給されていることが確認できるだろう。)
但し、概ね冷房能力4,0kWを境に家庭用エアコンの場合も室外機に電源を供給する機器が用意されている。
一方で業務用エアコンは室外機に対して電源を供給する。
電気代
電気代は一般的に電力会社との契約形態によって異なる。
しかし、電気代自体はエアコンの電源種別によって左右されるものではない。
電気代は後述する運転効率により変化する。
運転効率とは消費電力量あたりの空調能力であり、この数値が高いほど少ない電力量で効率的に空調を行うことを示す。
運転効率が高いほど電気代が安価となる傾向がある。
運転効率
運転効率についても家庭用エアコンと業務用エアコンでは異なる。
家庭用エアコンは3.6kW付近から大きく効率が低下することに対し、業務用エアコンは能は能力の増加に伴い効率がなだらかに低下する。
(メーカーにより顕著に異なるため、あくまでも参考としてご確認いただければと思う)
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冷媒管長、冷媒管高低差
家庭用エアコンと業務用エアコンで大きく異なる項目の一つが冷媒管長と冷媒管高低差の制約である。
冷媒管は室外機と室内機を接続するための配管で、室外機側で冷媒を圧縮や膨張する仕組みを利用して熱交換を行う。(室内の冷暖房を行う)
家庭用エアコンは外壁をまたいで室外機と室内機を設置することを前提としているため、最大冷媒管長さがわずか20m程度までとなる。
業務用エアコンは50m-100m程度までは室外機と室内機を離して設置することが可能である。
また、冷媒管の高低差についても考慮する必要がある。
家庭用エアコンは15-20m程度であることに対し、業務用エアコンは30m程度までとなる。
なお、最大冷媒管長さとは、冷媒を追加封入した際の最大値となる。
法定耐用年数
法定耐用年数についても家庭用エアコンと業務用エアコンでは異なる。
国税庁によれば家庭用エアコンは一般的に6年が法定耐用年数となる。
メーカー推奨交換目安も10年程度と短い。
一方で、業務用エアコンは13年もしくは15年が法定耐用年数となる。
(能力により法定耐用年数が異なる)
ただし、業務用エアコンは各種パーツの耐用年数が5年-10年であるため、定期的なメンテナンスや部品交換が必要となるケースが多い。
まとめ
今回は、家庭用ルームエアコンと業務用パッケージエアコンの違いを紹介した。
家庭用ルームエアコンのほうが安価である反面、様々な制約がある。
これらのメリット・デメリットを総合的に判断したうえで、空調方式を決定いただければと思う。
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