全負荷相当運転時間とは -概念や計算方法を紹介-

こんにちは。

特に基本設計段階において、様々な熱源・空調方式を比較する際に全負荷相当運転時間に基づき試算を行う場合がある。
全負荷相当運転時間を用いることで、熱源・空調機器の詳細な運転状況がわからなくても、ある程度の近似値を用いて概略検討を行うことができる。
しかし、全負荷相当運転時間の考え方と求め方を知らないと、これらの方法を使いこなすことができない。

今回は、全負荷相当運転時間の概要と計算方法を紹介する。

全負荷相当運転時間とは、年間の熱負荷熱源・空調機器の能力で除して求められる値のことである。
これにより、熱源・空調機器が100%で運転した際に、年間の熱負荷を処理するために要する相当運転時間を求めることができる。

全負荷相当運転時間の計算方法 その1

全負荷相当運転時間は、下表の式で求めることができる。
例えば、年間の熱負荷が10,000[kW]で熱源・空調機器の能力が10[kW]の場合は、全負荷相当運転時間は10,000÷10=1,000[h/年]となる。

計算式
全負荷相当運転時間[h/年] = 年間の熱負荷[kW] ÷ 熱源・空調機器の能力[kW]

全負荷相当運転時間の計算方法 その2

全負荷相当運転時間
冷凍機570時間
ボイラー600時間
※出典:建築設備手帳

設計段階では前述した方法で全負荷相当運転時間を求めることが困難であることがしばしばある。
そういった場合には、建築設備手帳に記載の全負荷相当運転時間を使用する方法もある。
但し、一般的な事務所ビルが参考となっているため、事務所以外の建物用途の場合に使用する場合は注意が必要である。

全負荷相当運転時間の計算方法 その3

他にも、年間の空調運転時間数から全負荷相当運転時間を求める方法が有効である。

1年間の時間数

全負荷相当運転時間を確認するにあたって、まず、1年間の時間数を把握する必要がある。
1年間を時間数に換算すると8,760時間である。

計算式
1年間の時間数[h/年] = 24[h/日] x 365[日/年] = 8,760[h/年]

一年間の空調運転時間

例えば事務所ビルの場合は、平日の9時から18時頃までの約9時間が空調運転時間となる。
1年間のうち2023年度における平日の日数は247日である。
そのため、1年間の空調運転時間はおおよそ2,223時間となる。

計算式
1年間の空調運転時間[h/年] = 9[h/日] x 247[日/年] = 2,223[h/年]

建物用途や空調の運用方法により、1年間の空調運転時間は大きく異なる。
例えば学校の場合は、夏休みや冬休みがあり、これらの期間の間は殆ど空調が運転されることはない。
一方で、データセンターでは24時間365日空調が必要となる。

年間空調負荷率

次に、年間空調負荷率を確認する必要がある。
年間空調負荷率を30%とすると、2,223[h/年] x 30[%] = 667[h/年]となる。
つまり、年間空調負荷率が30[%]における、全負荷相当運転時間は667[h/年]となる。

まとめ

今回は、全負荷相当運転時間の概要と計算方法を紹介した。
設計方針を決めるためにも、全負荷相当運転時間をうまく活用されたい。

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