屋内消火栓・屋外消火栓の圧損(揚程)の算定方法

こんにちは。

屋内消火栓や屋外消火栓を建物に導入する際に圧損計算書の提出が必要となることが多い。
これは、消防設備の一つであるだけに、有事の際に万が一消火活動に支障をきたすことがあってはならないためだ。
また、これらの動力源となる消火ポンプは発電機で計画されることが基本となる。
つまり、ポンプの能力が不足していることがわかると、発電機の容量へも影響が発生する可能性もある。

今回は屋内消火栓・屋外消火栓の圧力損失(揚程)の計算方法を紹介する。

屋内消火栓・屋外消火栓の圧力損失の要素

圧力損失の要素
配管長およびバルブ類の圧損
ホースの損失水頭
実揚程
ノズルの損失水頭

屋内消火栓と屋外消火栓の圧力損失の要素はおおきく「配管長およびバルブ類の圧損」「ホースの損失水頭」「実揚程」「ノズルの損失水頭」の4つにわけて計算を行う。
これらの合計が屋内消火栓・屋外消火栓の圧力損失となる。

配管長およびバルブ類の圧損

配管長が長いほど、またバルブ類が多いほど、水の流れを阻害するため、圧損が大きくなる傾向にある。
配管長の単位圧損は配管内を流れる流量と配管口径により、以下の式により求めることができる。

配管長による単位圧損(αn)の計算式
αn = 1.2 x (流量[L/min]^1.85) ÷ (配管内径[cm]^4.87) ÷ 100
出典:建築設備設計基準

また、バルブ類の圧損は、口径ごとに決まった数値を用いる。
以下に一例を示す。

呼び径エルボ90°チーズ仕切弁アングル弁逆止弁
401.3m1.6m0.3m6.9m3.4m
501.6m3.2m0.3m8.8m4.4m
652.0m4.0m0.4m11.0m5.5m
出典:建築設備設計基準

配管長およびバルブ類の圧損合計

配管長およびバルブ類の圧損合計は以下の式で求められる。

①配管長およびバルブ類の圧損合計
① = 配管長による単位圧損(αn) x (配管長[m] + バルブ類の圧力損失合計[m])
出典:建築設備設計基準

計算例

計算条件
配管内の流量300L/min
配管径65A(内径67.9mm)
配管長10m
弁類ベンド90° x 1
仕切弁65A x 1

左記の計算条件の際の①配管長およびバルブ類の圧損を算出する。

計算結果は以下の通りとなる。

配管長による単位圧損(αn)の計算式
αn = 1.2 x (流量[L/min]^1.85) ÷ (配管内径[cm]^4.87) ÷ 100
αn = 1.2 x 300^1.85 ÷ 6.79^4.87 ÷ 100 = 0.041
バルブ類による圧損の計算式
バルブ類の圧損 = ベンド90° x 1 + 仕切弁65A x 1
バルブ類の圧損 = 2.0m + 0.4m = 2.4m
①配管長およびバルブ類の圧損合計
① = 配管長による単位圧損(αn) x (配管長[m] + バルブ類の圧力損失合計[m])
① = 0.041 x (10[m] + 2.4[m]) = 0.5m

ホースの損失水頭

ホースの損失水頭
1号消火栓3.6m
易操作性1号消火栓18~25m
2号消火栓8~15m
広範囲2号消火栓13~19m
屋外消火栓4m
出典:建築設備設計基準

ホースの損失水頭は消火栓の種類により左記の通り設定されている。

実揚程

実揚程とは、ポンプの吸込口(フート弁)の部分から消火栓の箱までの高さのことを示す。
高さ1m = 揚程1mとなる。
設計段階では断面図や系統図を用いて実揚程を算定することが多い。

ノズルの損失水頭

ノズルの損失水頭
1号消火栓17m
易操作性1号消火栓17m
2号消火栓25m
広範囲2号消火栓17m
屋外消火栓25m
出典:建築設備設計基準

ノズルの損失水頭は消火栓の種類により左記の通り設定されている。

計算例

以下に計算例を2例紹介する。

まとめ

今回は屋内消火栓・屋外消火栓の圧力損失(揚程)の計算方法を紹介した。
屋内消火栓、屋外消火栓は消火ポンプを必要とし、発電機の容量へも影響を与える。
そのため、少しでも早い段階で手戻りがないように計画を進めることが重要だ。

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