こんにちは。
住宅も含めてよく施設利用者や建物購入者が目にするDSとかPSであったりEPSなどのよくわからない用語。
特に建物利用者が使用することができるスペースではなくただのデッドスペースのように見える空間。
ただそんなスペースでも意味があるからその空間が存在するわけだ。
特に設備設計者初心者の方はそれぞれの意味もよくわからないことも多いかと思う。
今回はそんなDS,PS,EPSの役割とその必要性、配慮すべき事項について紹介する。
DS,PS,EPSの用語の定義は以下の通りだ。
用語 | 英訳 | |
---|---|---|
DS | ダクトシャフト | Duct Riser |
PS | 配管シャフト | Pipe Riser |
EPS | 電気配線シャフト | Electric Riser |
なおShaft(シャフト)は日本語英語であるため通じないことがほとんどだ。
通常Riser(ライザー)と呼ばれることが多い。
DS,PS,EPSのそれぞれの意味は以下の通りだ。
用語 | 意味 |
---|---|
DS | 設備用のダクトを階をまたがって縦に通すためのスペース |
PS | 設備用の配管を階をまたがって縦に通すためのスペース |
EPS | 電気用の配線を階をまたがって縦に通すためのスペース |
DS,PS,EPSの役割
DS,PS,EPSの各役割について紹介する。
まずはDSの役割について
図中に示したものは一例ではあるが例えば便所の排気。
便所の排気は基本的に臭気を伴うため1Fへ直接排気することは大規模な建物の場合は少ない。
そのため屋上まで排気用のダクトを設ける必要があるためそのダクト用のスペースを設ける必要がある。
必ずしもDS内に納める必要はなく極論室内露出でも良い。
ただそういった設備用のダクトや配管が露出の場合見た目に直結するので基本的に新築の場合は専用のスペースを設けることが多い。
続いてPSの役割について
例えば、中間階に便所がある場合。
(ふつうは各階にあるが細かな簡易化のため省略)
給水管が埋設されたところから給水を供給する必要があるため建物の中間階や上階に水廻りが発生する時点でPSが必要となる。
その他にも室外機が屋上や1Fに集約されている場合にも冷媒管を室内機まで導くためにPSが必要な場合も存在する。
(図中の場合は既に4階への水供給のため少なくともポンプによる圧送が必要だが簡略化のため省略)
EPSについて説明する。
電気を使用する以上どの建物にも必ず電気の供給が必要だ。
そのため電気の引き込みを地中から行う必要がある。
また家のブレーカーを想像していただけるとわかりやすいが要所要所に管理用の盤等を設ける必要がある。
それらの盤置場と電気配線のスペース各階に発生するためEPSが必要となる。
DS,PS,EPSと命名する理由
DS,PS,EPSと命名する必要があるかと問われれば異なる名称としても全く差し支えない。
そのため当然異なる室名称にしてもよい。
但し通常建物を管理する方々からすればDS,PS,EPSといった用語は既に彼らの共通単語としても確立している。
そのため無理に名前を変えて何のための室用途なのかをわかりにくくするくらいであれば素直にDS,PS,EPSといった室名を割り当てた方がよいだろう。
DS,PS,EPSをまとめて一室してはいけない理由
DS,PS,EPSをまとめて一室にしてはいけない理由を以下に紹介する。
漏水対策
先ず特殊な考え方をするべき必要がある室がEPSだ。
EPS内には電気の盤関係が設置される。
そのため漏水などにより電気の盤へ水が噴霧されてしまうと盤が壊れてしまう。(水損事故が発生する)
そういった事故防止のためEPSは間違ってもPSと同じ室内に共存してはいけない。
管理上の理由
続いては管理上の理由だ。
基本的にDS,PSは設備業者が請け負い工事を行う。
一方でEPSは電気側の業者が工事を行う。
またトラブル発生時や機器などの更新時に業者を呼び修復などを行う場合が多い。
そんな業者作業時に他の業者が工事した製品などが同じ室内にあり万が一いたずらなどされた場合はどうなるだろうか。
当然それで二次災害的にトラブルが発生した場合はどちらかの業者の責任問題となる。
ただいつだれがいたずらしたか、もしくは誰が誤って触れてしまったかは当事者本人にしかわからない。
つまり責任の所在が不明確になってしまうのだ。
テナントが複数計画されている場合
またテナントや住居が同一建物内に複数ある場合も同様だ。
他のテナントのせいで自身のテナントが損害を得たとすればまた責任問題がいろいろとややこしくなる。
そのためにもDS,PS,EPSはそれぞれで独立させる必要がある。
なおDS,PSの結合については上記の理由から特段問題になることはないと判断し、かつ法規上満足している状況であればDS,PSを一体化しても差し支えないだろう。
DS,PS,EPSの計画の留意点
DS,PS,EPSは各階の位置を揃える
DS,PS,EPSを計画する際は原則として各階同一の位置に設置する必要がある。
(必ずといったわけではないが)
各階で異なる位置にDS,PS,EPSを設置すると設置位置が異なる階でどうしてもダクトや配管の横引きが発生する。
横引きが発生するということは天井裏の納まりを気にしなければならない。
横引き発生部分にはその階へ供給しているダクトや配管も計画される。
つまり納まらなく結果として天井高さを下げなければならないといったことが発生する。
ちなみに上下階のDS,PS,EPSの重なりが中途半端に重なっている場合は上階の壁と各シャフトが干渉することも考えられる。
EPSの上部には水廻りを設置しない
EPSの上部に水廻りを設置すると万が一水廻りから漏水した時にEPSへ漏水が発生する可能性がある。
具体的にはEPS天井部分に給水配管や排水配管が必要となる。
それらの水配管から漏水が発生する可能性がある。
そのためEPSの上部には絶対に水廻りを計画しないようにするべきだ。
まとめ
今回はDS,PS,EPSの役割とその必要性、配慮すべき事項について紹介した。
設計者にとっても以外にも大きな役割・使命を果たすスペースであり、計画初期段階からしっかりと整理しておくことをお勧めする。
また実際にDSやPS、EPSが必要だと認識をしても実際に納まらないと意味がない。
そのためには各種必要な寸法をきっちりと押さえる必要がある。
コメント